会社乗っ取り事例6選を紹介、乗っ取りの方法と具体的な対策を解説

自社が会社乗っ取りされないよう対策を講じておきたい、オーナーならだれしも考えることでしょう。会社乗っ取りの大半は、法的な手順に則って行われるため合法ではありますが、旧経営陣が一方的に追放されることも多くオーナーとしては避けたい事態です。この記事では、実際に起こった会社乗っ取り事例6選、会社乗っ取りの方法と具体的な対策を紹介します。

⇒事業承継対策(紛争対策・相続税対策・株価対策・後継者対策)なら!

会社乗っ取りとは

会社乗っ取りとは、現在の経営者ではない人物や組織により、会社の経営権が乗っ取られることです。乗っ取りというと法的な問題があるように思えますが、実際の会社乗っ取りは必ずしも違法な行為ではなく、第三者が対象となる会社株式の過半数を合法的に入手して経営権を掌握する方法が一般的です。

会社乗っ取りの目的と背景

会社乗っ取りの目的や背景は一概に言えず様々ですが、一例として次のようなケースが考えられます。

  • オーナーや主要株主が株式を相続する際に、団結した周囲により経営権から排除される
  • 複数いる主要株主それぞれの経営方針が異なって会社支配権争奪になる
  • 冷遇された主要株主が敵対者に株式を売却した結果、敵対者が多数派になる
  • 乗っ取ろうとする者が不満を持つ株主を説得して、多数派工作によって多数派となる
  • 能力のある役員や従業員が会社の顧客やノウハウを盗み、元会社を骨抜きにしたり新会社を立ち上げたりする
  • 対象会社が上場企業の場合は、合法的な敵対的買収によって傘下に収められる
  • 乗っ取り犯が、株主総会で自らの代表取締役就任を決議された等の議事録を偽造し、不正登記という違法行為によって乗っ取る

会社乗っ取りは、相続や株式の買い集め、合法的な買収、違法行為などによって達成されることが多いです。たとえば相続では、オーナーが後継者に株式を集中させずに家族に株式を分散させる、年若く経験値も少ない子供を後継者に指名するなどのケースでクーデターが起こりやすいです。代表取締役は過半数の議決権を集めれば解任可能であり、予想されるほど安泰な地位ではありません。

会社乗っ取りを防ぐためには、乗っ取りが簡単にできそうだと思わせるような隙を周囲に与えないことが重要です。

会社乗っ取りの事例6選

会社乗っ取りは実際にどのように起こるのかを理解するために、会社乗っ取りの事例6選を紹介します。

株式の買い占めによる会社乗っ取り事例

上場企業における会社乗っ取りの方法として一般的なのは、株式の買い占めにより議決権の過半数を得て経営権を掌握する方法です。

かつては東証二部上場企業だった春日電機も、この方法による乗っ取りの被害に遭いました。乗っ取りの首謀者S氏は、自ら設立したアインテスラ社名義で春日電機の株式を買い占めます。大株主となったS氏は2008年6月の株主総会で、春日電機の創業者一族による経営陣への再任を否認して自らが取締役に就任、その後の取締役会にて社長へと就任し春日電機の乗っ取りを完了しました。

S氏は会社乗っ取りには成功しましたが、株式買い占めによりアインテスラの資金繰りが悪化、回収が難しいと理解しながら春日電機からアインテスラに無担保で約5億5000万円もの大金を貸し付けます。多額の焦付きの影響から、春日電機は2009年2月に上場廃止に陥り、同年7月には会社更生手続きの開始が決定、以降は因幡電機産業が設立した、春日電機と同じ商号の新会社が事業を承継しました。S氏は春日電機に多額の損害を与えた件で、2011年に会社法違反容疑で逮捕され、2012年には懲役3年の実刑判決が確定しています。

創業者一族のお家騒動が敵対的TOBを誘発した事例

一代で会社を大きくしたカリスマ的創業者の死後は、創業者の実子が後継者になるかを巡ってお家騒動が起こることがあります。大戸屋ホールディングスでは、創業者の死後にその従兄弟が社長を続けて創業者の長男は会社を引き継げない、創業者一族から見れば会社乗っ取りと感じる騒動が起こりました。

発端は、大戸屋HDの実質的な創業者だった元会長が2015年に急逝したことです。2012年時点で、元会長は従兄弟に社長の座を譲ってはいましたが、長男を後継者にしたい意向を公表していました。しかし、元会長の死後に従兄弟率いる大戸屋HDと長男は対立、長男は常務から平の取締役に降格となり、2016年には取締役を辞任します。大戸屋HDの経営から締め出された長男は、2019年に自身や母親が保有していた大戸屋HDの株式19%弱をコロワイドに売却し、コロワイドは大戸屋HDの筆頭株主に一躍躍り出ました。

創業者一族のお家騒動が、第三者のコロワイドに大戸屋HDへ介入する隙を与えてしまったのです。コロワイドは過去にも牛角やかっぱ寿司、フレッシュネスバーガーの運営会社を傘下に収めてきましたが、2020年第一四半期の決算はコロナの影響もあり赤字に転落していました。大戸屋HDの知名度を活かした給食提供などの新事業展開を希望し、コロワイドは大戸屋HDの買収に乗り出します。当初は友好的な姿勢で臨んでいましたが、大戸屋HDの経営陣と対話ができなかったことや、大戸屋HDの急激な業績悪化から、次第に敵対的買収へと姿勢を転じていきました。

コロワイドはまず、2020年6月に大戸屋HDの株主総会で、12人の取締役候補を提案します。この提案は株主総会で否決されましたが、4割の株主から賛成を集めることができたため、コロワイドは同年7月に大戸屋の敵対的TOB(株式公開買付け)に踏み切ります。同年9月にコロワイドはTOBの成立を発表、持ち株比率は19%弱から46%強に高まり大戸屋HDの経営権を掌握、元会長の従兄弟など旧取締役10人が解任され、元会長の長男を含む新取締役7人が選任されました。

元会長の従兄弟目線で見ると、元会長の長男を大戸屋HDの経営から締め出せたと思ったら、長男が第三者のコロワイドに株式を売り渡し、最終的に敵対的TOBへとつながる要因を作ってしまった失敗事例だったのではないでしょうか。

元会長の代表取締役解任による会社乗っ取り事例

オーナーや代表取締役であっても地位が安泰とは限りません。オーナーが保有する議決権が過半数を下回ると、他の株主が団結してオーナーの代表取締役解任を決議してしまうケースもあります。

ユニバーサルエンターテイメント社の元会長O氏は、同社の安定株主として設立された岡田ホールディングス(当時の筆頭株主)の株式を、今後の事業承継を見据えて長男長女に分配しました。その結果、長男長女の議決権を合わせると53%と過半数を超え、逆にO氏の議決権は46.4%と過半数を下回ってしまいました。つまり、岡田HDにおける取締役人事はO氏の同意なしで議決可能となってしまったのです。

O氏は2017年5月に岡田HDの取締役を解任され、その後ユニバーサル社の取締役会でも取締役解任を通告されました。同年6月の株主総会では、既にO氏が取締役ではなくなった岡田HDが筆頭株主として賛同したことで、O氏はユニバーサル社の取締役からも解任されてしまいます。さらに、O氏は会社資金を不正流用したとして同年10月にユニバーサル社から損害賠償訴訟を起こされました。

虚偽の変更登記による会社乗っ取り事例

ここまで紹介した事例は、旧経営陣に敵対する方法ではありますが、法に従った手順に則って行われた合法的な乗っ取りでした。しかし、次に紹介するのは、株主総会などで乗っ取り犯の役員就任が決議されたと議事録を偽造して、虚偽内容を不正に登記して会社を乗っ取った明らかに違法な事例です。

臨時株主総会の議事録を偽造

2016年に香川県で、自らの父親(社長)が所有するビル管理会社を乗っ取る目的で、臨時株主総会で自らの代表取締役就任が決議されたとする虚偽内容を不正に登記したとして、社長の息子や司法書士など5人が逮捕されました。

2009年にも東京都で、化粧品製造販売会社の乗っ取りを目的として、同社の役員4人が辞任したとする辞任届や、臨時株主総会で容疑者の役員就任が決議されたとする議事録などを偽造し虚偽の変更登記を申請したとして、司法書士などが逮捕されています。

医療法人の理事会議事録を偽造

会社だけではなく、医療法人でも同様の手口が使われています。2015年11月に千葉県の医療法人で、理事会議事録を偽造して理事長の変更登記を行い同法人を乗っ取ったとして、投資会社社長が同法人から刑事告発されています。偽造された議事録では、同年9月に理事会が開催されて前理事長が退任し、法人の運営と無関係の医師が新理事長に選任されたと記載されていました。しかし実際には、前理事長と新理事長はともに入院中で理事会当日は外出せず、他の理事も理事会には不参加でした。

投資会社社長は、2013年に医療法人に対して傘下の診療所複数を買収するよう提案して買収資金を提供、同法人は診療所複数から運営を引き継ぎます。この件で同法人の運営に入り込んだ投資会社社長は、2015年1月にも同法人の実印を借り受けて返却しないといった不穏な動きを取っていました。

⇒事業承継対策(紛争対策・相続税対策・株価対策・後継者対策)なら!

会社乗っ取りの方法

ここまで会社乗っ取りの事例を見てきましたが、実際に会社を乗っ取る方法としては主に次の手段が挙げられます。

  • 敵対的買収などのM&A
  • 譲渡制限株式の相続
  • 親族などによるクーデター
  • 虚偽の変更登記
  • 反社会勢力などによる違法行為

大企業などの上場企業では、敵対的買収などのM&Aによる経営権の掌握が一般的な方法ですが、中小企業などの非上場企業では、株式に譲渡制限がかけられているため株式の買い占めが難しいです。代わりにクーデターなどの泥臭い方法が用いられます。

敵対的買収などのM&A

上場企業における会社乗っ取りの一般的な方法は、敵対的買収などのM&Aです。敵対的買収は、日本では2005年のライブドアによるニッポン放送の買収劇によって広く知られるところとなりました。通常のM&Aは、互いの経営陣による同意のもとに友好的な協議を重ねて進行します。しかし、乗っ取りと呼ばれるようなM&Aでは、買収側がTOBなどの一方的な株式取得により経営権を握ろうとします。

TOB(株式公開買付け)とは、行う側が買付けの期間や価格、予定数などを公告して、市場外で不特定多数の株主から広く株式を買い付けることです。株主はTOBに応募すれば株式を売却できます。株式取得が目的なため、買付け価格は市場価格よりも高額に設定されるのが通常です。

譲渡制限株式の相続

中小企業の大半は、株式に譲渡制限をかけることで敵対的な人物に株式が買い占められないように対策を取っていますが、相続は譲渡制限の対象とならないため、譲渡制限株式であっても相続されてしまいます。そのため、会社乗っ取りを考えるような人物の手に、相続によって譲渡制限株式が渡ってしまうリスクもあり得ます。

親族などによるクーデター

事業承継などを見据えてオーナーが親族などに株式を分配した結果、オーナー以外の議決権総数が過半数を超えてしまうケースがあります。議決権が増えた親族や役員などに悪意があった場合、団結してクーデターを起こし、株主総会で代表取締役の解任を決議してオーナーを追い出すことも可能です。

虚偽の変更登記

前述した医療法人などの事例のように、会社乗っ取りを企む人物が、自らや関係人物の役員就任が株主総会で決議されたと議事録を偽造して、その議事録を根拠に虚偽内容を不正に登記して会社を乗っ取る方法があります。

これまで挙げてきた会社乗っ取りの方法は、敵対的な方法ではありますが違法行為ではありませんでした。しかし、虚偽の変更登記による乗っ取りははっきりとした違法行為のため、被害を受けたら速やかに刑事告発を行う必要があります。

反社会勢力などによる違法行為

近年増加しているのが、中小企業のオーナーにうまく取り入って取締役等に選任された人物が、その後オーナーに反旗を翻して会社を乗っ取り、資金や備品などを強奪して立ち去る事例です。そのような人物は自身またはバックが反社会勢力に属していることが多いため、被害に遭った後は即座にその人物を取締役等から解任し、刑事告発と民事損害賠償請求を行う必要があります。

会社乗っ取りは違法性があるか

会社乗っ取りに違法性があるかどうかは、どのような方法で会社を乗っ取ったのかで判断されます。

上場企業における敵対的買収などのM&Aは、一方的ではありますが合法的に株式を入手しています。親族などのクーデターによってオーナーが代表取締役から解任される事例も、株主総会にて過半数の議決権をもって解任を決議しているので、手続き自体に違法性はありません。とはいえ、クーデターなどではオーナーの退陣を強制的に進めるので、違法性はなくとも倫理的に問題があるケースもあります。

会社乗っ取りの事例は、手続き自体は法に従っているケースが大半です。しかし、前述した虚偽の変更登記など、中には違法行為による悪質な会社乗っ取りもあるため、そのような場合は弁護士に相談して速やかな対策を取る必要があります。

会社乗っ取りで社員はどうなるか

会社乗っ取りにおいて社員が最も気になるのは、自らの処遇がどうなるのかでしょう。上場企業の乗っ取りでは、人材やノウハウは資産とみなされ、買収後の経営をスムーズに進めるために社員の定着を図るべく待遇が保証されるケースもあります。友好的な買収であれば、買収後の社員の処遇も交渉内容となり、買収後1年間は雇用が保証されるのが一般的です。非上場企業でも、乗っ取った人物が経営に詳しくない場合は、実際に現場を動かしている人材をむやみに辞めさせると運営が立ち行かなくなるため、そのまま雇用することが多いです。

しかし、会社を乗っ取った人物や組織が前オーナーと敵対していて、前オーナーの影響力を無くしたいと考えている場合には、社員の処遇が不安定になりやすい傾向があります。

⇒事業承継対策(紛争対策・相続税対策・株価対策・後継者対策)なら!

会社乗っ取りの対策

会社乗っ取りは現オーナーが強制的に退陣させられるケースや、経営や社員への影響も大きいことから、オーナーとしてはできるだけ防ぎたい事態です。具体的な対策には次の方法が挙げられます。

  • 種類株式の活用
  • 持株会社の設立
  • 株主の属性調査
  • 買収防衛策の活用

種類株式の活用

会社乗っ取りの対策として、最も広く用いられているのが種類株式の活用です。種類株式とは、一定の事項において株主の権利内容に特別な条件が定款で設定されている株式を指します。会社法は9つの一定の事項を定めており、会社乗っ取りの対策に利用できるのはその中でも次の2事項に関する条件を設定できる種類株式です。

  • 会社による株式の強制取得が可能(取得条項付株式)
  • 種類株主総会での決議が必要(拒否権付株式)

取得条項付株式

取得条項付株式とは、一定の事由(取得事由)が生じたときに、それを条件として会社が強制的に取得できる株式です。たとえば、取得条項付株式を利用した仕組みの一例として、取得事由をオーナーの逝去と設定し、オーナーが亡くなったら会社が取得条項付株式を取得できるようにしておきます。

会社が取得条項付株式を株主から取得する際には、株主に対価を与える必要がありますが、その対価を議決権がない議決権制限株式に設定しておくのです。これで、後継者と対立する可能性がある人物に株式が渡ったとしても、会社乗っ取りの可能性を下げることができます。ただし、発行済の普通株式を取得条項付株式に変更するには株主全員の同意が必要な点に注意しましょう。

拒否権付株式(黄金株)

拒否権付株式(黄金株)とは、株主総会や取締役会で決議される事項について、株主総会や取締役会での決議とは別に、この種類株式を持つ株主だけの種類株主総会における決議を要する株式です。つまり、株主総会や取締役会で決議された事項を拒否できる権利を持っています。黄金株の権利は強大でたった1株でも存在感を発揮できるため、会社乗っ取りの対策としても有効です。たとえば、クーデターにより株主総会でオーナーである代表取締役の解任が決議されても、オーナーが黄金株を持っていれば決議を拒否できます。

このように黄金株の威力は抜群ですが注意点が2つあります。1つは、会社に敵対的な人物の手に渡ることのないよう、あらかじめ譲渡制限をかけておく点です。もう1つは、拒否権が発動できる範囲を適切に設定しておかないと、健全な経営を阻みかねない点です。黄金株は絶大な影響力を持つため、発行は慎重に検討する必要があります。

持株会社の設立

持株会社とは、他会社の株式を保有することでその会社を管理・支配する会社を指し、純粋持株会社と事業持株会社の2種類があります。純粋持株会社とは、株式保有による他会社の支配のみを目的として自らは事業を行わない会社であり、一般的に「持株会社」といえば純粋持株会社を指します。これに対して、事業持株会社とは株式保有による他会社の支配をしつつ自らも事業を行う会社です。

持株会社のスキームを利用した対策として、乗っ取りを防ぎたい現会社の親会社として持株会社を新たに設立し、現会社の株式をすべて持株会社に集約・管理させるグループ会社体制に移行する方法があります。この方法により、第三者による現会社の株式入手は実質的に不可能となります。

株主の属性調査

上場企業の場合、資金さえあればどんな人物でも株式を買い集めることができ、企業側が株主を選定できません。そのため、素性が不明な大株主が突然現れた場合は、その株主の属性や他株主との関係性などを次の方法で調査して対策を講じる必要があります。

法人名や人物名で各媒体を検索

疑惑の株主が法人だった場合、まずは法人のホームページがないかを検索しましょう。ホームページと実際の事業実態があるなら、一般人でもある程度株主の属性は把握可能です。

法人名や人物名によるニュース記事やインターネットの検索は、手軽にできて一定の効果があります。疑惑の株主が過去に事件を起こして逮捕されていないかは最低限押さえておくべきです。さらに、名称に「詐欺」「乗っ取り」「反社」などのキーワードを加えて検索すると、警戒すべき情報が見つかるかもしれません。掲示板の書き込みなど真偽不明な情報もありますが、火のないところに煙は立たず、何らかの判断材料にはなります。また、官報の検索では、企業代表への就任や決算公告、破産や解散、国家資格や帰化情報など、該当項目があれば情報を入手できます。

オンライン上で有価証券報告書などを閲覧できるEDINETでは、上場企業の大量保有報告書や適時開示情報などを検索できます。調べたい株主の法人名や人物名で検索すれば、他の企業に対して株式の大量保有や反市場的な行為を過去現在に行っていないかなどの情報が入手可能です。

取引のある金融機関や調査機関に相談

大手の銀行や証券会社は、顧客に対して取引可否の判断をするために独自の情報を蓄積しているので、取引のある金融機関などに疑惑の株主について何か情報を持っていないか相談してみるのもよいでしょう。

また、疑惑の株主がホームページを持たない法人やペーパーカンパニー、全くの個人の場合は、一般人が属性調査をするにも限界があります。検索や金融機関への相談で情報が得られない場合は、外部の調査機関に調査を依頼して対策を講じておくのがよいでしょう。

買収防衛策の活用

会社を乗っ取ろうとして買収側が一方的に敵対的買収を進めてくる場合は、次の買収防衛策などで対抗する方法があります。

  • ポイズンピル
  • ホワイトナイト
  • ゴールデンパラシュート
  • クラウンジュエル
  • パックマンディフェンス

ポイズンピル

ポイズンピルとは、あらかじめ、敵対的な買収者が現れたときには買収者以外の既存株主に新株予約権を発行するという毒薬条項(ポイズンピル)を設定しておく買収防衛策です。ポイズンピルにより、敵対的買収を受けても新株が発行されて株式数が増えるので、買収者の持ち株比率が下がり、買収に対するコストが大きくなります。

ホワイトナイト

ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられたときに、友好的な買収者(白馬の騎士=ホワイトナイト)を探して、買収ないし合併をしてもらう買収防衛策です。どちらにしろ買収されるので苦肉の策ではありますが、敵対的な買収よりも友好的な買収を選択したいときに用います。

ゴールデンパラシュート

ゴールデンパラシュートとは、あらかじめ経営陣の退職金を高額に設定しておくことで、買収を受けても旧経営陣の解任を困難にし買収コストを高める買収防衛策です。飛行機から旧経営陣のみが金のパラシュートで脱出するという揶揄が込められています。

クラウンジュエル

クラウンジュエルとは、買収者にとって魅力となる自社の資産や事業部門、子会社などを第三者に譲渡するなどして、自社の魅力を低下し買収意欲を削ぐ買収防衛策です。王冠から宝石(=クラウンジュエル)を取ってしまえば王冠は狙われなくなるという意味が込められています。

パックマンディフェンス

パックマンディフェンスとは、敵対的買収を受けた会社が、買収側に対して逆にTOBを仕掛ける買収防衛策です。TOBの資金捻出のための借入や資産売却によって企業価値が下がり買収する魅力が薄れたり、買収側がTOBへの対応に追われて疲弊したりするため、敵対的買収の断念につながる可能性があります。

⇒事業承継対策(紛争対策・相続税対策・株価対策・後継者対策)なら!

まとめ:会社乗っ取りが起こったら専門家に相談

会社乗っ取りの実務的な対策としては、前述したように種類株式の活用などが挙げられますが、最も重要なのは乗っ取り側が付け入る隙を与えないことです。オーナーの知識・経験不足や経営陣の不仲などの弱い部分を突かれてあっさり会社を乗っ取られるケースがよくあるので、会社や経営陣の弱みを把握して補強方法などの対策を講じる必要があります。

実際に会社乗っ取りが起こってしまったら迅速な対応が求められます。そのときは会社乗っ取りの専門家である弁護士事務所に相談しましょう。弁護士事務所は、多種多様な会社乗っ取りの方法に対して具体的で有効な対応策を取ることができる頼れる存在ですので、ぜひ相談してみてください。