非上場株式の遺産分割は相続税評価額を基準に分割しては絶対にいけません!!

遺産に非上場株式が含まれている場合、税理士先生の株価算定する相続税申告書の相続税評価額を非上場株式の時価だと勘違いして、相続税評価額を基準に遺産分割を行ってしまい、非常に不公平でバランスの取れない遺産分割をしてしまう相続の件が増えています。

すなわち、相続税評価額では、以下の通り、1億円の現金は間違いなく1億円と評価されます(1000万円の現金は1000万円と評価されます)が、1億円の非上場株式は1000万円程度の評価にしかならないこともあります。

相続税評価額 時価
1億円の現金 1億円 1億円
非上場株式 1000万円 1億円

ですので、亡くなった父が会社を経営しており非上場株式(時価1億円で相続税評価額1000万円)を保有していた場合、相続税評価額を基準に遺産分割を行ってしまうと、兄弟間で以下のような遺産分割が行われてしまい、著しく不公平な遺産分割になってしまうのです。この場合、兄妹で、同じ額の遺産を相続したように見えますが、実は全然違うのです。

兄:非上場株式(相続税評価額1000万円だが時価1億円)
妹:現金1000万円

相続税申告書の評価額は遺産分割における評価額ではない!

要するに、相続税申告書の株式評価額は、株式の価値を表す時価とは全く違うものですので、遺産分割における基準額として使用してはいけないのです。

このことは、税理士先生の間では常識のようですが、弁護士の中では全く知られていません。

税理士先生はあまりにも常識で当たり前なのでいちいち説明しないとのこと。弁護士先生は全く想像すらしていないし税理士先生も殊更に教えてくれないので全然知らなかったとのこと。

相続税評価額に基づいて相続税申告書を作成しますが、その中に非上場株式の評価額も書かれていますが、その評価額というのは相続税評価額であり、国税庁が相続税を計算するための便宜的な数字に過ぎないのです(会社というのは不動産と異なり非常に評価がしにくく、他方、大量な相続案件について公平な課税のためには無難な株価評価ができ不公平感がないようにする必要があり、そのために作成されたのが財産評価基本通達であり相続税評価額ですので、大量処理のためのやむを得ない制度なのです)。

勿論、相続税評価額が時価と近い場合もあり、その場合はあまり問題は発生しませんが、相続税評価額が時価と著しく異なる場合もあり、そのような場合まで、相続税評価額を時価と思い込んで、それを基準に遺産分割をすると、非常に不公平でバランスの取れない遺産分割が起こってしまうのです。

その結果、5年後10年後には、兄は会社から得られる資金で非常に豊かになっているのに、妹の現金は減る一方であり、子供に良い教育もしてあげられないくらい格差が生じてしまい、一体どこでどう間違ったのかと思うくらいの差が生じます。

遺産分割の際には会計士先生に非上場株式の価格を計算してもらう?!

これも、非上場株式の相続税評価額は、非上場株式の時価とは大きく異なることがあることに鑑みると、①相続税申告の際には税理士先生に非上場株式の相続税評価額を計算してもらい、②遺産分割の際には会計士先生に非上場株式の価格を計算してもらう必要があるということとなります。

ただ、相続税申告で税理士先生に非上場株式の株価評価書を作成してもらうために費用が掛かっているのに、さらに会計士先生に非上場株式の株価評価書を作成してもらおうとする人は多くありません。

そのために、世間的には悲劇が大量に発生しているのです。

相続税申告書に使用する相続税評価額を遺産分割においても用いるのは、あくまでも便宜上の理由によるものであり、本来、①相続税申告の基準である相続税評価額と②遺産分割の基準である時価はイコールではありません。特に、事業承継の準備で相続税対策をしている会社については、相続税評価額が著しく低く評価されるようにテクニカルに工夫されていることも多く、そのような場合に相続税評価額を遺産分割でも用いると、⇒非上場株式を相続した兄は得をして、現金を相続した妹は悲劇に見舞われるのです。

相続税申告の際には税理士先生に非上場株式の相続税評価額を計算してもらう!

相続税評価額は相続税計算の基礎ですので、特に、事業承継を控えている優良企業においては、株価評価を引き下げて相続税評価額を引き下げようとして長期間に渡って税理士に相談することが多くなっています。

相続税評価額は、上記の通り、大量な相続案件について公平な課税のためかなり画一的に計算式が決まっており、配当を減らしたり、従業員を増やしたり、時間を掛けさえすれば、テクニカルに株価評価額を低下させることができるのです。また、税制優遇制度もあります。そのような税理士先生のテクニックを駆使して評価額を下げた⇒非上場株式が相続財産の場合、非常に価値のある非上場株式が、著しく低い価格と評価されることもあるのです。

ですので、相続から数年たってあまりにも状況がおかしい場合は、一度、この点を調べてみた方が良いと思われます。