土地の相続で兄弟間トラブルに発展する理由とは?対処法や分割方法を解説
土地の相続では、兄弟間のトラブルに発展することがあります。
土地を相続すると、兄弟が相続人の場合、相続財産は兄弟が共有する状態で引き継ぎます。
相続する土地において、共有の持分割合は法定相続割合となります。
例えば、3人兄弟で土地を相続する場合、土地の3分の1ずつを持分割合として共有します。
こうして共有された土地は、2次相続、3次相続と共有者が増えていきます。
相続する土地の共有者を増やさないためには、兄弟の1人の単独所有にするか、売却する必要があります。
ただし、相続する土地を売却する場合は、兄弟など共有者全員の承諾が必要になります。
相続する土地を共有する兄弟との関係が気薄な場合は、話し合いが上手くいかず、兄弟間トラブルの原因になりやすいです。
兄弟間トラブルに発展しないためには、お互いのことをよく考え、兄弟間で譲り合って相続する土地を共有することが大切です。
この記事では、土地を相続するときに兄弟間トラブルに発展する理由と、その対処方法や分割方法を解説します。
兄弟で土地を相続する方は必見です。
土地の相続で兄弟間トラブルに発展する理由
土地の相続で、兄弟間トラブルに発展する理由を5つ紹介します。
金銭的な問題や遺言書、寄与分など、兄弟間トラブルに発展する理由はさまざまです。
兄弟で土地を相続する方は理由をしっかりと理解した上で、対処方法や分割方法を見ていきましょう。
遺言書がない
遺言書がない場合は、土地の相続で兄弟間トラブルに発展する原因となります。
遺言書とは、被相続人(他界した人)が生前に遺産の分割方法などを記載した書類です。
相続する土地の分割方法が記載されている遺言書がある場合は、兄弟などの共有者は原則としてその遺言に従うことになります。
遺言書がない場合は、土地を相続する兄弟が、自分たちで分割方法を話し合った上で分割します。
兄弟などの相続人による、土地を分割するための話し合いを「遺産分割協議」と言います。
遺言書があれば、土地を相続する兄弟間で主張をぶつけ合うことは少なくなり、トラブルに発展しにくくなります。
土地相続における遺言書の内容も、遺産分割協議で変更することが可能です。
遺言書の内容が不合理であれば、土地を相続する兄弟間で話し合い、遺産分割協議で合理的に分割することができます。
ただし、遺産分割協議が成立するには、土地を相続する兄弟全員の合意が必要です。
全員の合意を得られなければ遺言書通りとなるため、遺言書の有無はとても大切です。
土地の相続を兄弟で控えている場合は、ぜひ遺言書を残してもらうようにしましょう。
不動産の占める割合が多く、現金が少ない
土地の相続で兄弟間トラブルに発展する原因として、相続財産の中で不動産の占める割合が多いことも理由の一つです。
土地とわずかな貯金を残して他界する人は、相続財産の中で不動産の占める割合が高いです。
相続財産には不動産や現金がありますが、現金は相続する兄弟間で分けやすいため、トラブルに発展することはほとんどありません。
不動産は売却しない限り、相続する兄弟間へ等分に分割しにくいため、トラブルに発展する原因となります。
例えば、相続財産で被相続人の家が2,000万円、被相続人の貯金が600万円だったとします。
兄弟のうち兄は被相続人の家に住居しており、弟は実家から離れて住居しているようなケースがあります。
兄が被相続人の家を相続して、弟が貯金を相続する場合、兄は2,000万円を相続したのに対し、弟は600万円しか相続できず、兄弟間の金額に差が生じます。
兄弟のどちらとも、合計2,600万円の半分である1,300万円を遺産として受け継ぐ権利があります。
しかし分割しにくい不動産があることで、相続する兄弟間の金額に大きな差を生んでしまいます。
土地も不動産扱いなので、分割しにくい相続財産の一つです。
兄弟で土地などの不動産を相続する場合は、どうしても金額に差が生じてしまうことを理解しておく必要があります。
想定よりも現金が減っていた
土地を相続するときに、想定よりも現金が減っていたということも兄弟間トラブルに発展する原因です。
これは土地を相続する準備をしっかりしていた兄弟でも起こりうることです。
被相続人が他界する数年前から、相続する土地の分割方法を話し合っておく兄弟もいます。
被相続人が他界する3年前の資産状況が、土地などの不動産が2,000万円、現金が600万円だったとします。
兄が2,000万円の不動産を相続し、弟が600万円の現金を相続することで納得していたとします。
しかし、被相続人が他界する前に病気を患い、医療費や介護費などが発生した場合は注意が必要です。
この結果、不動産は2,000万円のままでも、現金が50万円しか残っていないようなケースもあります。
現金600万円を相続すると思っていた弟も、50万円しか相続できないため、話が違うというトラブルに発展します。
土地以外の相続で、現金は減っていることが多いため、相続前に兄弟間で分割の準備をしても、財産状況が変わってしまうことがあります。
被相続人が生前に相続準備をする場合は、現金は相続時に減っている可能性もあることを理解しておく必要があります。
寄与分を主張している
土地の相続で兄弟間トラブルに発展する原因に、兄弟のどちらか一方が寄与分を主張し始めることが挙げられます。
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人に対して、遺産分割で決定した土地などの相続分に加えて、貢献の度合いに応じた相続分をプラスすることができる制度です。
例えば、兄が被相続人の介護をしており、土地などの相続時に「介護をしていた自分の方が多くの財産をもらうべきだ」と主張するケースです。
兄弟のどちらか一方が寄与分を主張し始めると、話し合いが延長し、兄弟間トラブルに発展する原因となります。
原則として、土地などの相続で寄与分を認めるかどうかは、遺産分割協議による兄弟間の話し合いで決めることができます。
中には、弟が、介護をしていた兄に多くの財産を譲る姿勢を見せ、話がまとまることもあります。
土地などの相続で兄弟間の話がまとまらない場合は、家庭裁判所で調停を行うことになります。
ただし調停では、寄与分の主張は普通の介護などでは認められることはありません。
基本的に「子供が親の介護をするのは当然のこと」として話が進み、家庭裁判所で介護による寄与分が認められるケースは少ないです。
兄弟による土地などの相続で、普通の介護などでは寄与分が認められないことを理解しておく必要があります。
特別受益を主張している
土地などの相続で兄弟間トラブルに発展する原因に、兄弟のどちらか一方が特別受益を主張することも挙げられます。
特別受益とは、被相続人から生前に贈与等を受け、特別に受けた利益のことです。
民法上、特別受益の対象になるのは以下の3つです。
- 遺贈(被相続人の遺言により遺産を無償で相続人に譲渡すること)
- 結婚または養子縁組のための贈与
- 生計の資本として受けた贈与
特別受益がある場合、兄弟で土地などの財産相続では特別受益を考慮した分割方法が認められています。
特別受益がどこまで認められるかはケースにより異なります。
例えば、兄は私立大学に進み、弟は国立大学に進んだ場合、「兄は私立に進んだから相続財産は少なくするべきだ」と主張するケースがあります。
高等学校の学費は特別受益となりますが、家庭の通常教育の範囲内なら特別受益として認められません。
他の共同相続人も同様の教育環境であれば、こちらも特別受益には該当しません。
原則として、特別受益は明確なもの以外は認められにくく、土地などの相続で個人的な主張を始めると兄弟間トラブルに発展する原因となります。
特別受益は、明確なもの以外認められないことを理解しておきましょう。
相続した土地を兄弟で共有するのが難しい理由
兄弟間の共有で相続した土地は、共有者全員の了承がないと売却できません。
例えば、1つの土地を3人兄弟で相続した場合、1人でも売却に反対したら土地を売ることはできません。
土地などの相続物件は、2次相続、3次相続と共有者が増えていきます。
兄弟など相続する共有者が多くなると、共有者全員の了承を得ることが困難となり、売却したい人がいても売却できない期間が続くことになります。
土地を相続した場合、兄弟の誰かの単独所有とするか、売却するのが望ましい対応です。
複数人で相続した土地は、共有者の一人が亡くなると残りの共有者が持分を相続します。
これを繰り返すと共有者が多くなり、関係の薄い者同士となると共有している土地の処分が困難になります。
相続した土地を兄弟で分割する方法
相続した土地を兄弟で分割する方法は、
- 相続放棄
- 分筆による現物分割
- 代償分割
- 換価分割
- 遺産分割協議
の5つの方法があります。
それぞれの分割方法について詳しくご紹介します。
相続放棄
相続放棄とは、兄弟などの相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続方法です。
被相続人の土地などの財産が、明らかに負債が大きい場合に行います。
被相続人が借金を抱えたまま他界した場合、相続放棄すると兄弟などの相続人は一切の債務を免れることができます。
ただし、被相続人がプラスの財産を残していても、兄弟のどちらか一方に資産を寄せるために相続放棄が使われることもあります。
例えば、被相続人の相続財産が、2,000万円の自宅と60万円の現金だけあります。
兄は結婚して遠方で生活基盤があり、弟は被相続人の自宅に住居しているケースです。
兄は夫婦の収入で十分な暮らしをしており、被相続人から自宅を相続する必要はなく、弟にその自宅を相続してもらった方がいいと考えています。
この場合、兄が相続放棄を行い、弟に全ての相続財産を寄せることで遺産分割ができます。
兄の相続放棄によって、土地や自宅などの財産が弟の単独所有となり、共有状態が解消できます。
相続放棄のメリットは、
- 手続きが簡便
- 費用が安い
という2点です。
相続放棄は、家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出するだけで行うことができます。
相続人1人が単独で行うことができるので、兄弟などの遺産共有者が何度も話し合う必要はありません。
費用も3,000円程度のため、後述する遺産分割協議書よりもはるかに安いです。
相続放棄に必要な費用
- 相続放棄の申述書に添付する印紙代 800円
- 被相続人の戸籍謄本 450円
- 被相続人の除籍謄本、改製原戸籍謄本 750円
- 被相続人の住民票 300円程度(市区町村によって異なる)
- 申述人の戸籍謄本 450円
被相続人や相続人の考え方によっては、相続財産を共有するよりも、1人に集中させた方が良いという判断もあります。
相続財産を分割する必要がない場合は、相続放棄で兄弟の誰かに資産を寄せてしまう方法が効果的です。
相続放棄は、「相続開始を知った時点から3か月以内に行わなければならない」という制限があります。
相続放棄で兄弟間の共有状態を解消したい場合は、早めに対応しましょう。
分筆による現物分割
分筆(ぶんぴつ)による現物分割は、相続する土地そのものを物理的に分割する方法です。
分筆とは、土地を切ることをいいます。
例えば、良い条件の土地であれば、売るのはもったいないという考えもあるでしょう。
100坪程度の土地であれば、2人兄弟で分筆すると50坪程度です。
50坪あれば、住宅用や駐車場用など十分に利用価値があります。
分筆で土地を半分に分割すれば、兄弟など相続人のそれぞれが土地を利用できます。
相続した土地を半分に分割して、それぞれ単独所有にすれば、兄はその土地を自宅用に利用し、弟はその土地を売却するという選択もできます。
分筆による現物分割では、兄弟のそれぞれが相続した土地を自由に使えるというメリットがあります。
ただし、現物分割を選択する場合、その土地が十分に広い面積があることが必要です。
例えば、40坪の土地を半分に分割すると20坪となり、狭すぎて使い道が無くなります。
小さく分割すると、逆に価値を落としてしまうため、狭い土地は現物分割に向きません。
一戸建ての敷地は40〜60坪程度のため、2人兄弟で分筆による現物分割を選択する場合は、少なくとも80坪以上の広さが必要です。
分筆による現物分割は、分割したあとに利用価値があり、売却もできるような広い土地で行いましょう。
代償分割
代償分割は、一部の相続人が財産を多く相続したことで不公平が生じた場合、その相続人が他の相続人にお金を支払うことで調整する方法です。
例えば、2人兄弟が相続人で、被相続人の相続財産が、2,000万円の土地と1,000万円の現金というケースを考えます。
この場合、合計3,000万円の半分である1,500万円を、兄弟のそれぞれが相続できる権利があります。
兄が2,000万円の土地を相続し、弟が1,000万円の現金を相続するという分割方法では、公平に分割できません。
そこで、2,000万円の土地を相続した兄が、弟に対して自分の貯金から500万円を代償金として渡すと、兄の相続財産は実質1,500万円になります。
弟は1,000万円の現金を相続しましたが、兄から500万円もらったため、こちらも相続財産は実質1,500万円になります。
ただし代償分割は、お金を渡す方の相続人に相当の現金がないと実行できません。
理屈の上では公平な分割方法ですが、現実的には実行しにくい分割方法です。
換価分割
換価分割は、遺産を売却して得た現金を、兄弟などの相続人同士で分割する方法です。
相続した土地が不要な場合、換価分割が一番現実的な分割方法です。
自宅のような不動産の場合、兄弟などの相続人のうち誰かが住居することがあります。
相続人が引き続き必要とする不動産の場合は売却できないため、換価分割ができません。
相続人が利用しない土地であれば、売却してから換価分割することで、最も公平に分割できます。
相続した土地が不要であれば、兄弟などで共有のまま売却し、現金を相続人同士で分割する方法がスムーズです。
遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人同士で遺産の分割方法を決める話し合いのことです。
兄弟など相続人が合意した内容を、遺産分割協議書と呼ばれる書面にまとめます。
相続財産は、法定相続割合で平等に分割できないことがほとんどです。
そのため、遺産分割協議によって法定相続割合とは異なる割合で分割します。
法定相続分とは異なる割合で分割するときは、
- 遺言
- 遺産分割協議
の2種類です。
遺言は、被相続人(他界した方)の生前に遺産を分割します。
遺産分割協議は、被相続人が他界したあとに遺産を分割します。
遺言がない場合や、遺言の内容が承認できない場合は、遺産分割協議で土地などの相続財産を分割します。
遺産分割協議は義務ではありません。
期限もなく、いつ行っても良いものです。
ただし、相続税を納める人は、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」が相続期限となります。
相続税を納税する義務がある人は、遺産分割協議を10ヶ月以内に終わらせることが望ましいです。
遺産分割協議書は、
- 被相続人の銀行口座から相続人の銀行口座に払い戻しを行う場合
- 土地相続の名義変更を行う場合
に使用する正式な書類です。
司法書士や行政書士などの専門家に作成を依頼することがほとんどです。
遺産分割協議書の作成費用は、遺産総額の0.5〜1%が目安です。
作成には、兄弟など相続人全員の実印と署名も必要です。
相続した共有の土地を、兄弟間で分割する方法はいくつかあります。
- 相続放棄を上手く用いて兄弟の誰かに資産を寄せる
- 土地を物理的に分割する
- 代償金を渡す
- 土地を売却して得た現金を分割する
- 相続人同士で決めた分割方法を書面にまとめる遺産分割協議
それぞれの特性を理解して、状況に一番適した方法で分割しましょう。
兄弟で土地を相続するときに発生する費用
兄弟で土地の相続や分割時において、手続きのための費用や税金が発生することがあります。
相続した土地の売却益に対する所得税や住民税などです。
土地を相続する際に発生する費用と税金
- 遺産分割協議書作成の代行費用 約10万円~20万円
- 遺産分割協議書に必要な書類の手配 約1万円
- 相続登記の代行費用 約5~8万円
- 法務局への相続登記(登録免許税) 土地評価額 × 税率0.4%
- 一人あたりの相続税(土地評価額-基礎控除額)× 法定相続分 × 税率 - 控除額
土地の相続や分割時に発生する費用を把握しておくことで、「想定よりも相続できる金額が少なかった」と兄弟で分割トラブルに発展することを防ぐことができます。
円滑に土地などを相続するために予算を把握し、兄弟間で費用の負担方法を決めておきましょう。
遺産分割協議書作成の代行費用
遺産分割協議書は兄弟など相続人本人が作成できますが、専門的な知識が必要になるため、司法書士などの専門家に代行を依頼することがほとんどです。
司法書士に支払う作成費用は、遺産総額の0.5〜1%が目安となり、相場は約10〜20万円です。
遺産分割協議書に必要な書類の手配
遺産分割協議書の作成には、
- 被相続人と兄弟など相続人全員の戸籍謄本
- 印鑑証明書
などが必要です。
各書類の費用は兄弟など土地を相続する人数によって異なりますが、総額で約1万円かかります。
相続登記の代行費用
相続登記は、被相続人の所有権を兄弟など相続人へ移転する手続きのことです。
相続登記は個人で行うこともできますが、兄弟など複数人で相続する土地を分割して登記する場合は記載事項が多くなるため、司法書士へ依頼することがおすすめです。
司法書士に支払う金額は、約5〜8万円です。
登録免許税
登録免許税は、土地などの相続時に国に支払う国税です。
登録免許税は、以下の式で算出します。
登録免許税 = 土地評価額 × 税率0.4%
土地評価額は、固定資産評価額証明書に記載されています。
税率0.4%は、土地や中古住宅の相続時にかかる税率です。
例えば、土地評価額が1,000万円の登録免許税の場合、
1,000万円 × 0.4% = 4万円
となるので、土地評価額が1,000万円の場合は、4万円の登録免許税がかかります。
相続税
土地を兄弟で相続する場合、相続税は、
相続税 = 相続税の課税対象額 × 法定相続分 × 相続税率
となります。
相続税の課税対象額は、土地評価額(相続財産を国税庁のルールで評価した金額)から基礎控除額(相続人全員が適用できる控除制度)を差し引いた金額です。
相続税の課税対象額 = 土地評価額 - 基礎控除額
基礎控除は、
基礎控除金額 = 3,000万円 +(相続人数 × 600万円)
で求めることができます。
法定相続分は、民法で規定された各相続人による取り分の割合です。
兄弟間の法定相続分は、原則均等です。
相続税率は、相続税評価額の金額によって異なり、相続税評価額の金額が高くなるほど税率と控除額も高く規定されます。
例えば、評価額1億円の土地を売却して、兄弟2人で均等に相続する場合、
相続税の課税対象額 = 1億円 - 基礎控除額(3,000万円 + 2人 × 600万円)= 5,800万円
兄の相続税:5,800万円 × ½ × 税率15% - 控除額50万円 = 1,300万円
弟の相続税:5,800万円 × ½ × 税率15% - 控除額50万円 = 1,300万円
となり、兄弟1人あたり1,300万円が課税されます。
相続した土地を分筆して兄弟で分割するときの注意点
兄弟で土地を相続する場合、分筆(土地そのものを分割する)による現物分割を行うこともあります。
土地を分筆(ぶんぴつ)するときに必要な条件や、接道義務、分割方法の注意点をご紹介します。
分割の仕方によって価値が異なる
相続する土地は分割の仕方によって、価値の異なる土地を生み出してしまう可能性があります。
分筆は、分割しやすい土地と分割しにくい土地があり、分筆しにくい土地を無理に分割して価値を落としてしまうケースがあります。
兄弟などで相続した土地が分筆しにくい場合、売却による換価分割も併せて検討することが重要です。
分筆せずに売却した方が、価格が高くなる可能性があります。
分筆による分割は、十分に検討した上で行いましょう。
分筆するとき、隣地の土地との境界と、公道との境界の確定が必須です。
境界の確定には、時間と費用がかかる可能性があります。
また接道義務というルールがあり、土地が道路に面していないと建物を建てられません。
無道路地は価格が大きく下がってしまうため、注意が必要です。
兄弟などで相続した土地において、分割の仕方を工夫して無道路地を回避するよりも、分筆せずに売却した方が価格が高い場合もあるので、十分に検討しましょう。
接道義務を果たす
接道義務とは、幅が4m以上の道路に間口が2m以上接していないと建物を建てることができないというルール(都市計画区域および準都市計画区域内に限る)です。
土地を分筆する場合、接道義務を意識して分割することが重要です。
接道義務を満たさない土地を「無道路地」といいます。
無道路地は、建物を建てることができない土地のため、利用価値や価格が大きく下がります。
兄弟などで相続した土地を分筆するときは、無道路地を生み出さないように注意が必要です。
分筆には境界確定が必要となる
相続した土地を分筆する場合、その土地の境界が全て確定していることが条件となります。
土地の境界には2つの種類があります。
- 民々境界:隣地の土地との境界
- 官民境界:公道との境界
兄弟などで相続した土地を分筆するとき、民々境界と官民境界、両方の境界確定が必須です。
官民境界を確定するには、道路と正対する側の所有者の了承も必要です。
道路と正対する側の所有者数が多い場合、その分の時間と費用もかかります。
境界確定は、場合によっては100万円近くの費用がかかり、時間も半年以上かかることがあります。
兄弟などで相続した土地を分筆する場合、時間も費用もかかるということを理解しておきましょう。
相続した土地を売却して兄弟で分割するときの注意点
土地の相続で兄弟間トラブルに発展させないために、土地の売却について詳しく知ることが大切です。
相続した土地を売却して兄弟で分割するときの注意点について、詳しく解説します。
譲渡所得が発生したときは税金を支払う
兄弟で相続した土地を売却した場合、税金が発生することがあります。
税金が発生すると、換価分割は税引後の手残りを分割することになります。
土地を売却したとき、譲渡所得がプラスになる場合に、税金が発生します。
譲渡所得は以下の式で計算されます。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡価額は、売却額です。
譲渡費用は、仲介手数料などの売却にかかった費用です。
取得費は、土地の購入価額です。
購入額が分からない場合、概算取得費(譲渡価額の5%)が取得費になります。
相続した土地は取得費が分からないケースが多いため、概算取得費で計算することが多いです。
税率は、土地の所有期間によって決まります。
- 長期譲渡所得:所有期間が5年超の場合
- 短期譲渡所得:所有期間が5年以下の場合
と分類されます。
所得種類 |
所有期間 |
所得税率 |
住民税率 |
長期譲渡所得 |
5年超 |
15% |
5% |
短期譲渡所得 |
5年以下 |
30% |
9% |
兄弟などで土地を相続する場合、所有期間は、被相続人の所有期間を引き継ぎます。
被相続人がすでに5年以上保有していれば、長期譲渡所得の税率が適用されます。
窓口役の謝礼も考慮する
兄弟などで相続した土地が共有状態で売却される場合、不動産会社や司法書士、測量会社など、外部の関係者との窓口役を1人決めておくとスムーズに売却できます。
窓口役は、買い主や他の兄弟、他の共有者との調整などでかなりの稼働量になります。
窓口役に何らかの謝礼を考慮することも、兄弟での土地相続でトラブルへの発展を防ぎ、スムーズに売却できるポイントです。
謝礼は、お金でも食事でも構いません。
ただし、兄弟などで相続した土地を売却した場合、2割ほどの税金を納めなければならないので注意が必要です。
最低売却価格を決めておく
兄弟などで相続した土地が共有状態の場合、売却価格に対する判断が分かれてしまうことがあります。
相続した土地が共有状態での売却は、共有者全員の了承がないと売却できないため、価格の統一はとても重要な問題です。
共有の土地を売却する場合、「何万円以上の買い主が現れたら売却する」という最低売却価格をあらかじめ兄弟などの共有者で決めておくことがポイントです。
最低売却価格を決めるときは、複数の不動産会社に査定を依頼します。
例えば、兄は2,000万円程度で売却できれば十分だと考えているのに対し、弟は2,500万円程度で売却することを考えているとします。
6社に査定を依頼し、4社が2,000万円から2,100万円に集中し、残りの2社が2,500万円前後に集中するとします。
兄弟で、2,000万円以上の価格が出たら売却しようとあらかじめ決めておけば、スムーズに売却できます。
2,500万円くらいの買い主も現れるかもしれませんが、高い売却価格の買い主は現れる可能性が低くなります。
兄弟2人で2,500万円を目指してしまい、土地が売れず、あのとき2,100万円の買い主で手を打っておけば良かった、という後悔をすることがあります。
兄弟などで相続した土地を共有状態で売却するときは、最低売却価格を決めておくとスムーズに売却できます。
土地の相続で兄弟の意見が合わない場合の解決策
土地の相続で兄弟間トラブルに発展しそうな場合、どこに相談すれば良いのでしょうか。
結論から言うと、弁護士に依頼をするのが一般的です。
すでにトラブルが発生した場合も、問題を悪化させないために弁護士へ相談することがおすすめです。
他の解決策としては以下の3つが挙げられます。
遺産分割調停を申し立てる
費用を抑えたい場合、遺産分割調停を申し立てることを検討しましょう。
遺産分割調停とは、調停委員に間に入ってもらい、話し合いによる合意を目指す解決手続きです。
遺産分割調停は、土地などの相続に関して、兄弟などの相続人同士の話し合いを取り扱います。
遺産分割調停委員は中立的な立場を保ち、兄弟など双方の意見を聞き入れて、アドバイスや解決策を提案してくれます。
遺産分割調停の費用は、1〜2万円程度です。
遺産分割調停でも解決しない場合、遺産分割審判へ自動的に移行します。
遺産分割審判では、最終的に裁判官が遺産分割方法を決めます。
介護や生前贈与を考慮し、譲歩し合う
介護や生前贈与も考慮しながら、兄弟でお互いに譲歩し合うことも大切です。
兄弟は土地の相続において公平であるべきですが、被相続人との関わり方が異なる場合もあります。
介護や高価な物の贈与など、被相続人にしてあげたこと、してもらったことを整理してみましょう。
被相続人との関わり方で兄弟の差が明らかになると、兄は介護で大変だったかもしれないなど、譲歩の気持ちが芽生えやすくなります。
相続の正しい知識を身に付け、共有する
土地などの相続に関する正しい知識を身に付け、兄弟などで共有することは話し合いの上で大切です。
土地相続に関する法律や税制度の知識が、話し合いで解決の助けになることもあります。
例えば、相続した土地などの不動産を売却すれば譲渡所得税がかかることがあります。
相続財産が居住用の家なら、利益の3,000万円までは非課税です。
このような制度を知っているかいないかで、兄弟など共有者の意見も変わってくるでしょう。
繰り返しになりますが、土地などの相続で兄弟間トラブルを解決するためには、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に依頼すれば、話し合いに介入し、他の相続人と交渉してくれます。
土地などの相続に詳しい弁護士なら、その経験と知識から、個別のケースに応じた解決策をアドバイスしてくれるでしょう。
兄弟同士の話し合いでは感情的になってしまいますが、弁護士という第三者が介入することで、建設的な話し合いを維持できます。
兄弟など相続人同士での話し合いでは上手くいかなかったものの、弁護士に依頼すればスムーズにまとまることが期待できます。
遺産分割調停だと、申し立ての準備から解決まで、スムーズに進んでも3〜6ヶ月かかります。
長いと数年以上かかるケースもあります。
相続税の申告や土地の利用などで困る場面が出てくるので、早急に解決したい場合は弁護士に相談するようにしましょう。
土地の相続で兄弟間トラブルに発展する理由のまとめ
土地などの相続で、兄弟間トラブルに発展することは珍しくありません。
相続する土地を兄弟で共有した場合、2次相続、3次相続と共有者がさらに増えていきます。
兄弟のうち1人の単独所有にするか、売却することで解決できる可能性はあります。
しかし、相続した土地の売却には共有者全員の了承が必要など、制約が多く実際には話し合いが長引くことがほとんどです。
土地などの相続で兄弟間トラブルを防ぐためには、弁護士に依頼をするのが一般的です。
すでにトラブルが発生した場合も、問題を悪化させないために弁護士へ相談することがおすすめです。
土地などの相続に詳しい弁護士なら、個別のケースに応じた解決策を提案してくれます。
兄弟など相続人同士だけでは話し合いが数ヶ月や数年以上へ長期化し、相続税の申告や土地の利用などで困る場面が出てきます。
早急に解決したい場合は弁護士に相談し、兄弟でトラブルを発生させることなくスムーズに解決していきましょう。