遺言書の効力の範囲とは?種類や書き方、無効になってしまう事例をわかりやすく解説

基本的に遺言書には自由に内容を記載することができますが、法的に効果を持つ内容は限定されています。遺言書について法的効力がどこまで認められるのか、そしてどのような場合に遺言書が無効になるのかは、多くの方が気になる点だと思います。 

 この記事では、遺言書の効力が及ぶ範囲と、遺言書を無効にしないための要点を中心に解説します。遺言書の種類や、2018年7月に行われた民法改正のポイントも紹介しますので、重要なポイントをしっかり理解して、ご自身やご家族の遺言書作成にお役立てください。 

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法的効力のある遺言書の種類 

遺言書は、遺言者が亡くなった後、その人の財産をどう分けるかを決めた文書です。通常、遺言書に書かれた通りに、被相続人の遺産を分けていきます。 

 遺言書の作成に関しては、民法において、法律の定める方式に従わなければならないと定められています(民法第960条)。つまり、遺言書が法的効力を持つためには、法律で定められた方式で作成する必要があるということです。 

 遺言書には「普通方式」と「特別方式」の2種類があります。普通方式は、さらに「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つに分かれます。 

 ここからは、普通方式と特別方式の遺言書について、順番に概要を解説します。 

自筆証書遺言 

自筆証書遺言とは、自分で手書きする遺言のことです。遺言の全文、自分の名前、日付を書いて印鑑を押せば、その文書は法的な遺言書として認められます。 

自筆証書遺言誰にも知らせずに自分一人で作れるため、最も簡単で、なおかつプライバシーを守れる方法です。また、特別な費用もかかりません。

しかし、自分で作るため間違いに気づきにくいほか、家に保管しておくために紛失・改ざんの危険があるなどの欠点があります。そのため、遺言者としては、遺言書の保管場所を相続人に対してどのように伝えるかも重要です。 

自筆証書遺言の方式の緩和 

なお、2018年7月の法改正によって、自筆証書遺言の作成にあたって、財産目録に限っては、自筆でなくても認められるようになりました。 

 これにより、財産目録をパソコンで作成したり、通帳のコピーや登記事項証明書等を添付したりすることが認められるようになっています。ただし、自筆証書遺言に添付するすべてのページに署名と押印が必要です(民法第9682 

 参考:法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります 

 自筆証書遺言書保管制度 

自筆証書遺言を作成する際は、自筆証書遺言書保管制度の利用も効果的です。自筆証書遺言書保管制度は、2020年7月10日より開始されたもので、自筆証書遺言を法務局に預けて画像データ化して保管してもらえる制度です。 

 自筆証書遺言書保管制度を利用すると、遺言書の保管申請時に、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官による外形的なチェックが受けられます。

また、自筆証書遺言書保管制度により法務局に預けた遺言書は、原本に加えて画像データとしても長期間適正に管理してもらえます(原本遺言者死亡後50年間画像データ遺言者死亡後150年間)。 

 こうした理由から、自筆証書遺言書保管制度を利用することで、遺言書の紛失・亡失のリスクを避けられるうえに、相続人等の利害関係者による遺言書の破棄や隠匿、改ざんなどを防ぐことが可能です。 

 参考:法務局「自筆証書遺言書保管制度について」 

公正証書遺言 

公正証書遺言とは、公証人の前で遺言書を作成する方法です。公正証書遺言では、遺言者が公証人事務所で遺言の内容を公証人に伝え、公証人がその内容を正式な遺言書に記載して保管します。 

 公正証書遺言の作成にはさまざまな手続きが必要で、他の方法よりも時間はかかりますが、それだけ遺言の信頼性が非常に高くなり、後になって遺言の内容が本当かどうかという疑問が出にくいという利点があります。 

 自筆で書く遺言書と法的効力は変わりませんが、公正証書遺言はその信頼性が高いため、特に遺言に従ってしっかりと遺産を分けてもらいたいと考える人に適しています。 

秘密証書遺言 

秘密証書遺言とは、遺言者が自分で作った遺言書にサインと印鑑を押して封をし、その封印された遺言書を公証人と証人がいる前で公証人事務所に預ける方法です。秘密証書遺言の利点は、遺言の内容が他人に知られることなく安全に保管されることで、紛失や改ざんの心配がないことです。家族は遺言書が存在することを認知できる点も、秘密証書遺言の利点です。 

 しかし、遺言書の内容に誤りがあっても、封を開けるまでその誤りに気づくことができないという欠点があります。そのため、秘密証書遺言は無効になる可能性が比較的高いです。また、秘密証書遺言は公証人に確認してもらい、作成した記録が公証役場に残るものの、遺言書そのものの管理は遺言者が実施しなければなりません。万が一、紛失してしまうと、遺言書の作成にかかった労力・お金が無駄になってしまうため注意しましょう。 

特別方式の4つの遺言書 

特別方式の遺言書は、緊急であったり特殊な状況下にあったりする人が用いる遺言の形式です。特別方式の遺言書は、例えば、生命の危機にある、船舶での事故が発生している、伝染病にかかって隔離されているといった場合に作成されます。 

このような状況では、普通の遺言書を作るための通常の手続きを踏む時間や環境がないため、特別な方法で法的効力のある遺言の作成が認められるのです。 

 特別方式の遺言書には、4つの種類があります。下表に、それぞれの概要をまとめました。 

名称 

概要 

一般危急時遺言  一般危急時遺言は、病気などで生命が危険にさらされているときに、3人以上の証人が見ている前で行う遺言のことです。通常の遺言を書くことができないほど緊急である場合に用いられます。一般危急時遺言では、遺言者が自分で文書を書かなくてもよく、証人が文書の作成や署名、押印を代わりに行います。 
難船危急時遺言  難船危急時遺言は、海上で遭難している船の中で、死の危機にあるときに2人以上の証人が見ている前で口頭で行う遺言です。こちらも遺言者が文書を書く必要はなく、証人が遺言者の話を聞いて文書にするとともに、署名や押印を行います。 
一般隔絶地遺言  一般隔絶地遺言は、伝染病などで外部と隔離された状況にある人が、警察官1人と証人1人以上が立ち会う中で作成する遺言です。一般隔絶地遺言では、遺言者が自分で遺言を書いて署名し、押印する必要があります。伝染病だけでなく、何らかの公的な理由で隔離されている場合にも、一般隔絶地遺言の方式が使えます。 
船舶隔絶地遺言  船舶隔絶地遺言は、船上で外部と隔離されている状態で、船の関係者1人と証人2人以上が立ち会う中で作成する遺言です。船舶隔絶地遺言でも、遺言者が文書に署名と押印をする必要があります。 

遺言書の効力が及ぶ範囲 

遺言書の記載内容に関して法的効力が及ぶ範囲は、民法において定められています。遺言書の効力が生じるのは、以下3つの事項の範囲です。  

  • 財産の分配・処分に関する内容 
  • 被相続人に近しい人の身分に関する内容 
  • 遺言の執行に関する内容 

 それぞれの内容について、順番に分かりやすく解説します。 

財産の分配・処分に関する内容 

財産の分配・処分、つまり自分の財産を死後に誰がどのように受け継ぐかを遺言書に詳しく書くことで、その内容は法的効力を持ちます。例えば、以下のような内容が法的効力を持ちます。 

  • 遺産分割についての割合や方法 
  • 法定相続人以外の人への遺産の継承(遺贈) 
  • 生命保険金の受取人変更 
  • 特別受益の持ち戻しの免除 

 特別受益の持ち戻しの免除とは、遺言者から特別受益〈特別な贈与〉を得た相続人が、それ以外の相続財産に関しては法律に基づき減額とされるところを、遺言によって免除されることです。 

 遺言の意図を明確にするためには、相続財産の金額まで具体的に記載することが大切です。曖昧な表現を使うと、相続人同士での話し合いが必要になり、遺言書の目的が果たされないこともありますので注意が必要です。 

被相続人に近しい人の身分に関する内容 

遺言書では、被相続人に親しい人の身分に関わる重要な事項についても、法的な効力を持たせることができます。以下のような項目がこれに当たります。 

  • 法的な婚姻関係にない相手との子どもを法的に認知すること 
  • 相続人に親権者がいない未成年がいる場合、その子の後見人を指定すること 
  • 指定した未成年の後見人の活動を監督する人を指定すること 
  • 相続人を相続から除外する、またはそのような除外を無効にすること 

 これら以外の身分に関する記載は、遺言書で法的な効果を持ちませんので、その点を覚えておきましょう。 

遺言の執行に関する内容 

遺言書に記載されている「遺言をどのように執行するか」についての内容も法的効力を持ちます。遺言を執行するためには、遺言書にその方法を明記する必要があります。 

 遺言書に記載がない指示については、法的に有効とはみなされません。例えば、配偶者宛の手紙に遺言執行者に関する希望を書いても、それは法的効力を持ちません。 

 遺言書で法的効力を持つ遺言の執行に関する内容には、主に以下の2点があります。 

  • 遺言執行者を指定すること:遺言で指定した人が、遺言に書かれた通りに遺産を分配します 
  • 遺言執行者の指定を第三者に委託すること:特定の第三者に遺言執行者としての役割を任せることができます 

 遺言で遺言執行者を指定した場合、相続人はその遺言執行者を介さないと、遺産を分配することが認められません。遺言の指示に従って遺産を確実に分配するためには、遺言執行者を指定することが重要です。 

遺言書の効力が及ばない範囲 

遺言書に書いておけば、どのような内容でも法的効力が認められるというわけではありません。ここでは、遺言書において法的効力を持つとよく誤解される以下3つの内容について説明します。 

  • 遺留分を侵害する内容 
  • 子の認知を除く身分行為に関する内容 
  • 付言事項 

 遺言書の作成にあたっては、法的効力が及ばない範囲も把握しておきましょう。 

遺留分を侵害する内容 

遺留分とは、法定相続人が持つ「遺言によって侵害されない最低限の権利」のことです。 

 相続発生時には、遺言によって特定の人物(A)に多くの財産を渡したいというケースも少なくありません。しかし、相続人は遺留分として法律で最低限の割合が守られていることから、相続分をまったく無視する形で「Aにすべてを譲る」といった遺言は無効となります。 

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子の認知を除く身分行為に関する内容 

子どもの認知以外の身分に関することも、遺言書において法的効力を持ちません。例えば、配偶者との婚姻関係の解消や養子縁組などは法的効力の範囲外です。 

付言事項 

付言事項とは、法的効力を持たない事項について補足的に記すものです。遺言書において、お世話になった人への感謝や、家族・自分が大切にしてきたものへの気持ち・願いなどを伝えることが一般的に行われていますが、この感謝・気持ち・願いなどを伝える文章のことを付言事項といいます。 

 付言事項には法的効力がなく、あくまでも相続人の想いを伝えるためのものです。ただし、付言事項を読んだ相続人に気持ちが伝わり、遺産分割協議後の行動などに影響を及ぼす可能性があることは認識しておきましょう。 

 参考:法務局「遺言書は大切な人への あなたのメッセージ」 

遺言書の有効期間 

遺言書に消滅時効や有効期限は設定されていません。たとえ相続開始の何十年も前に書いた遺言書であったとしても、基本的には効力を持ち続けます。ただし、以下のケースでは、遺言書の効力が失われる可能性があります。 

  • 遺言書を複数回作成しているケース 
  • 公正証書遺言の保管期間を過ぎたケース 

 まず、遺言書を複数回作成している場合、前回までに記載していた遺言書の内容と抵触する部分については、最新の遺言書の内容が効力を持ちます。つまり、前回までに記載していた内容のうち、最新の遺言書の内容と抵触する部分については、効力が失われます。 

 また、公正証書遺言において保管期間を過ぎた場合、その遺言書の効力が失われます。 

公正証書遺言は公証役場で保管されることから、意図的に破棄・紛失・偽造などが行われる心配がありません。ただし、公証役場での保管期限は、公証人法規則において原則20年と定められています。なお、遺言書を作成した人が生存している場合など、特別な事由により保存の必要があるときには、20年経過後も保管義務が継続します。 

 公証役場に保管されていれば、自宅や貸金庫などで保管していた遺言書の写しを紛失したとしても謄本を取得できます。しかし、保管期間を経過した後に写しを紛失してしまった場合には、その内容を証明できなくなるので注意しましょう。 

 上記2つのケースを除けば、基本的には遺言書に有効期間はありません。ただし、たとえ遺言書が法的に有効であっても、作成から長い月日が経過している遺言書にはさまざまな問題が発生しやすくなります。 

 例えば、相続人に指定していた人が遺言者よりも先に亡くなってしまったり、遺言書に記載しいていた預貯金を生前に使ってしまっていたりといったことが想定されます。 

 また、遺言書を作成した後に取得した財産については、遺産分割協議が求められるでしょう。こうしたことから発展するトラブルを回避するためにも、遺言書を作成したら定期的に見直しを行い、必要に応じて書き換えを行うことが望ましいです。 

効力のある遺言書の書き方 

前述のとおり、遺言書にはいくつかの種類がありますが、使用される頻度が比較的高いのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。 

 公正証書遺言の場合、公証人が職務として作成することから、要式違反により法的効力が無くなるリスクはほとんどありません。要式を満たさずに法的効力がなくなってしまうのは自筆証書遺言を使用しているケースが多いです。 

 本章では、自筆証書遺言を例に挙げて、法的効力のある遺言書の書き方のポイントとして、以下の5つを解説します。  

  • 基本的に全文自筆で書く 
  • 日付を入れる 
  • 氏名を自筆で書いて押印する 
  • 訂正・加筆の際は決められた方式を守る 
  • 書面で作成する 

 それぞれのポイントを把握しておき、遺言書の効力にまつわるトラブルの回避にお役立てください。 

基本的に全文自筆で書く 

遺言書は基本的に手書きで書く必要があります。ただし、前述のとおり、2018年7月の民法改正に伴い、財産目録に関してはパソコンで作成したり、別紙を添付したりすることが認められるようになっています。 

日付を入れる 

遺言書には、日付を書き加えることが必須です。日付の記載がないだけでも、遺言書の法的効力は認められなくなります。 

氏名を自筆で書いて押印する 

遺言者に自分の名前を自筆で書き、印鑑を押します。ここで使用する印鑑は、必ずしも実印である必要がありません。 

訂正・加筆の際は決められた方式を守る 

遺言書の作成にあたって、間違いを訂正する際は、間違った部分に二重線を引き、その近くに押印して「〇〇文字削除」と書いて署名します。 

 加筆する場合、吹き出しで文書を挿入し余白の部分に押印した後、「何文字加入」と書いて署名します。これらのルールは複雑で間違いやすいため、自信がなければ遺言書をはじめから書き直すことをおすすめします。 

書面で作成する 

遺言書は書面で作成しなければなりません。ビデオや音声録音などでの作成では、法的効力を持たないためご注意ください。 

効力が無効になる遺言書の事例 

ここまでに説明した内容を踏まえて、本章では、遺言書の効力無効になる事例を種類ごとに順番に解説していきます。 

自筆証書遺言が無効になる事例 

以下に、自筆証書遺言の作成にあたって、その遺言書の法的効力が無効となる代表的なケースをまとめました。 

  • 作成日の記載がない、あるいは作成日とは異なる日付が記載されている 
  • 自筆ではない(財産目録の部分はパソコンでも可能) 
  • 署名がない、あるいは他人が署名している 
  • 押印がない 
  • 相続財産の内容が不明確 
  • 遺言者以外が書いた遺言書 
  • 2人以上が共同で書いている 

公正証書遺言が無効になる事例 

以下に、公正証書遺言の作成にあたって、その遺言書の法的効力が無効となる代表的なケースをまとめました。  

  • 公証人がいない状態で作成されている 
  • 証人になれない人が立ち会っている 
  • 公証人に口授することなく、身振り手振りなどで内容を伝えている 
  • 証人が席を外している間に作成されている 
  • 証人欠格者が立ち会っており、証人の数が足りていない状態で作成されている 

 なお、秘密証書遺言の法的効力が無効となるケースは、自筆証書遺言や公正証書遺言などとほとんど同じです。 

特別方式遺言が無効になる事例 

以下に、特別方式遺言の作成にあたって、その遺言書が法的効力を持つケースをまとめました。 

一般危急時遺言  難船危急時遺言  一般隔絶地遺言  船舶隔絶地遺言  
証人または立会人  3名以上  2名以上  警官1名、証人1名以上  船長または事務員1名、証人2名以上 
作成者  口述を証人の1人が筆記  口述を証人の1人が筆記  誰でも良い  誰でも良い 
署名・押印  各証人  各証人  本人、筆記者、証人  本人、筆記者、証人 
日付の記載  必要  必要  必要  必要 
家庭裁判所の確認  必要(遺言の日から20日以内)  必要  不要  不要 

特別方式遺言のそれぞれの種類について、上記の条件を満たしていない遺言書は法的効力を持ちません。また、特別方式遺言には期限も設けられており、遺言作成後に6カ月間生存した場合には無効となります。 

効力のある遺言書を書く際に注意すべきポイント 

法的効力のある遺言書を書くためには、その取り扱い方にも注意が必要です。主な注意点としては、以下の4つが挙げられます。  

  • 遺言書の保管場所を工夫する 
  • 遺言書を勝手に開封しない 
  • 自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を採用する 
  • 弁護士に相談する 

 それぞれの注意点を把握しておき、遺言書の法的効力を無効にしないようにしましょう。 

遺言書の保管場所を工夫する 

遺言書は、書き方だけでなく保管場所の工夫も大切です。遺言者の死後、遺言書が発見されて遺言の内容が実行されない場合、遺言書を作成した意味がないためです。 

 遺言書の保管場所としては、安全であるうえに紛失の心配がなく、なおかつ死後速やかに発見してもらえるような場所を選定する必要があります。保管場所の具体例を挙げると、金庫や貴重品入れ、机の引き出しなどです。 

 また、税理士や弁護士など信頼できる人物に遺言書の原本を預けておくことも望ましいです。公正証書遺言を作成するケースでは、遺言書があることを家族に事前に知らせておきましょう。 

 遺言書を勝手に開封しない 

遺言者の死後、遺品を整理した人が遺言書を発見するといったケースも想定されます。そのような場合、内容を知りたくても勝手に開封してはいけません。 

 自筆証書遺言や秘密証書遺言を法的に有効とするためには、裁判所の検認が必要です。その際、勝手な開封は禁止されており、違反すると5万円以下の過料が課せられる可能性もあります。もしも遺言書を発見しても、その場での開封は避けて裁判所に届け出を行い、内容を確認してもらいましょう。 

 なお、検認を受けた遺言書はすべて法的効力が認められる、ということではありません。その遺言書の作成方法が法的に適切でなければ、検認を受けた遺言書でも無効となります。 

 自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を採用する 

遺言書に法的効力を持たせるための方法として、公正証書遺言の採用も挙げられます。 

 公正証書遺言では、遺言者の口述内容を元に公証役場にいる公証人が関与して遺言書を作成することから、遺言者が希望を端的に伝えるだけで遺言書を作成できます。 

 公正証書遺言では、公証人手数料はかかるものの、原本は公証役場に保管されるうえに、亡くなった後の検認手続きが不要となるため、安全に保管しつつ死後すみやかに遺言が執行されます。 

弁護士に相談する 

いずれの種類の遺言書を作成する場合であっても、事前に弁護士に相談することで、的確なアドバイスを受けることができ、法的に有効であり、内容的に適切な遺言書をスムーズに作成することができるようになります。 

 弁護士に相談すれば、遺言書の形式や内容に不備があったために、相続人に迷惑をかけてしまうといった事態を回避できるでしょう。 

遺言書の効力に関してよくある質問 

最後に、遺言書の効力に関してよくある質問と回答をまとめました。 

遺言書が複数存在する場合に効力を発揮するものはどれか 

遺言書が複数発見された場合、原則としては日付が最も新しいものが効力を持つことになります。遺言書の種類による優劣はないため、それぞれの遺言書に記載されている日付を確認しましょう。 

認知症の人が作成した遺言書に効力はあるか 

法的効力のある遺言書を作成するためには、遺言者が遺言能力を備えていることが求められます。しかし、認知症の人の場合、原則として遺言能力があるとは認めてもらえません。そのため、認知症の人が作成した遺言書に法的効力は認められません。 

まとめ 

法的効力のある遺言書を作成することは、決して容易ではありません。法的に有効な遺言書を作成するためには、弁護士のサポートを受けることが望ましいです。 

 また、相続人としても、遺言書を発見した際は、その遺言書が最新のものなのか、書かれている内容は法的に有効なものなのかなど確認すべき事項が多くあります。遺言書に関して疑問点があれば、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。 

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