相続した不動産を売却すると発生する税金はいくら?控除や特例制度も解説

相続した不動産の活用方法として、「売却」が挙げられます。 

「相続不動産を売った場合、税金はいくらかかるのか」「少しでも税金を減らしたい」と考える方は多いのではないしょうか。  

この記事では相続した不動産を売却した場合にかかる税金や特例制度について解説します。 

売却した場合の税制上のメリットやデメリット、売却にあたっての注意点なども詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。  

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相続した不動産を売却したときにかかる税金

相続した不動産を売却した場合、主に以下の5つの税金がかかります。 

  • 相続税 
  • 登録免許税 
  • 印紙税 
  • 譲渡所得税 
  • 住民税

 ここからは、それぞれの税金について見ていきましょう。  

相続税

相続税は、親などが亡くなって相続した不動産や金銭などの相続財産に課される税金です。 

 相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)で算出され、基礎控除額を超えた部分に課税されます。 

例えば、亡くなった人に妻と子供が1人いた場合、 

3,000万円+(600万円×2人)で、基礎控除額は4,200万円です。 

このケースで、相続財産の総額が6,000万円だったとすると、 

6,000万円-4,200万円で、1,200万円に相続税が課されることになります。 

登録免許税

登録免許税は、不動産の登記申請をするときにかかる税金です。 

不動産を相続が発生した場合に、亡くなった人から相続人に名義変更手続き(相続登記)をする必要があり、その際に法務局に登録免許税を支払います。 

 登録免許税は、不動産の課税標準額×2%で算出されます。 

例えば、不動産の課税標準額が1,000万円の場合、1,000万円×2%20万円が登録免許税となります。 

不動産の課税標準額とは、固定資産評価額を算出する際の基準になる額のことで、基本的に課税標準額と評価額は同じと考えて問題ありません。 

ただ、課税標準の特例措置等があるため評価額よりも低くなることがあります。 

 印紙税

印紙税は契約書などの文書にかかる税金です。 

印紙税法上、不動産を売却した際の売買契約書に印紙税が課税されます。 

不動産の売却金額によって印紙税の金額は異なりますが、売買契約書に必要な額の印紙を貼り付け、消印を押印する必要があります。 

例えば、3,000万円の不動産を売却した場合は、売買契約書に2万円(軽減税率適用時は1万円)の印紙を貼り付ける必要があります。 

譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益に課される税金です。 

譲渡所得税の税率は、不動産を所有した期間によって異なり、売却した年の11日時点で所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり税率は39%11日時点で所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり税率は20%となります。 

 また譲渡所得は、収入金額-(取得費+譲渡費用)の計算で求められます。 

「収入金額」とは、相続した不動産を売却して得た収入のことで、「取得費」は、亡くなった人がその不動産を購入した時の購入金額や手数料、相続人がその不動産を相続した際にかかった費用等のことです。また詳しくは後述しますが、取得費加算の特例が適用されると相続時に発生した相続税の一部をこの取得費に加算することが可能となります。 

「譲渡費用」とは、相続した不動産を売却するために要した費用のことで、例えば、仲介手数料や測量費等が挙げられます。ただし、不動産の維持管理費や修繕費は譲渡費用に含まれないので注意が必要です。 

 例えば、収入金額が4,000万円、取得費が3,000万円、譲渡費用が100万円だった場合、4,000万円3,000万円+100万円)で900万円に譲渡所得税がかかることになります。 

そして所有期間3年間だったとすると、900万円×39%351万円が譲渡所得税となるのです。 

住民税

住民税も譲渡所得税と同様で、譲渡所得にかかる税金です。 

住民税も不動産の所有期間によって税率が異なり、譲渡された年の11日時点で所有期間が5年以下の場合は9%、所有期間が5年を超える場合は5%と安くなります。 

相続した不動産を売却するときに使える特例、控除

相続した不動産を売却する際、特例や控除制度が適用されることがあります。 

代表的なものとして以下の5つが挙げられます。 

  • 相続した不動産を3年以内に売却するときの特例 
  • 自宅を売却するときの控除 
  • 空き家を売却するときの控除 
  • 10年以上所有した自宅を売却するときの軽減税率の特例 
  • 居住用の不動産を買い換えるときの特例 

ここからは、それぞれの特例や控除の内容について詳しく解説します。 

相続した不動産を3年以内に売却するときの特例

相続税の申告期限の翌日から3年以内に、相続した不動産を売却した場合、「取得費加算の特例」が適用されます。 

先述したとおり、譲渡所得税は、収入金額-(取得費+譲渡費用)×税率で算出されます。 

この取得費加算の特例が適用されることで、「取得費」に相続税の一部が加算され、譲渡所得税を節税することができるというものです。 

取得費に加算できる額は、相続税×不動産の相続税評価額÷(相続した全体の課税額+債務控除)で算出できます。 

取得費の額が大きいほど、譲渡所得税額を抑えられるので節税できるのです。 

 この特例を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。 

  • 相続税の申告期限の3年以内に相続不動産を売却すること 
  • 相続不動産を売却するのが、相続を受けた本人であること 
  • 不動産を相続するにあたって相続税が課税されたこと

が条件となります。 

ただし、空き家を売却するときの3,000万円控除の制度と併用できないので、どちらの制度を利用するのがよいか、よく検討する必要があるでしょう。 

自宅を売却するときの控除

個人がマイホームを売却したときに、譲渡所得から最大3,000万円控除できる制度があります。 

譲渡所得3,000万円までは譲渡所得税がかからないので、大幅に節税することができるでしょう。ただし、譲渡所得が3,000万円以下だと、この控除制度が適用されないので注意が必要です。 

 この控除制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。 

  • 居住している家屋であることまたは居住しなくなってから3年以内であること 
  • 前年または前前年にこの特例または買い替え特例を受けていないこと 
  • 親族以外の第三者に売却すること 

居住用の家を売却するというのが大きなポイントで、相続人が被相続人と同居していたようなケースでもこの制度を利用できます。 

一方で、事業用や別荘等で使用されていた家屋は対象外となるので注意が必要です。 

空き家を売却するときの控除

相続した空き家の不動産を売却した場合にも、譲渡所得から最大3,000万円控除される制度を利用できます。 

 この控除制度は条件が厳しく、以下の条件を全て満たす必要があります。 

  • 相続した不動産を201641日から20231231日までに売却すること 
  • 相続開始日から3年を経過した年の1231日までに売却すること 
  • 不動産の売却代金が1億円以下であること 
  • 親族以外の第三者に売却すること 
  • 売却する不動産自体が1981531日以前に建てられたこと 
  • 一定の耐震基準を満たしていること 
  • 相続開始から売却までの間に居住や賃貸、事業などの用途で不動産を使用していないこと 

また、先述したとおり、この控除制度と取得費加算制度は併用できないので注意しましょう。 

10年を超えて所有した自宅を売却するときの軽減税率の特例

10年を超えて所有した家屋を売却する場合、軽減税率の特例を利用できます。 

10年を超えて家屋を所有していた場合、長期譲渡所得の税率がさらに引き下げられるもので、譲渡所得税を大幅に節税できます。 

この特例は6,000万円が区切りとなり、譲渡所得が6,000万円以下の部分は、譲渡所得税の税率が14%、譲渡所得が6,000万円を超える部分の税率は20%となります。 

特例を利用しない場合の長期譲渡所得税の税率より約6%も引き下げることが可能となるのです。 

この控除制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。 

  • 売却した年の11日時点で不動産の所有期間が10年を超えていること 
  • 居住している家屋であることまたは居住しなくなってから3年以内であること 
  • 前年または前々年にこの特例を受けていないこと 
  • 親族以外の第三者に売却すること 

居住用の不動産を買い換えるときの特例 

居住用の不動産を買い換える場合にも、利用できる特例があります。 

この買い替え特例は、旧住宅を売却した利益には譲渡取得税が課税されず、買い替えた新住宅を売却する際に課税されるというものです。 

つまり譲渡取得税の課税を、新住宅の売却時まで先延ばしすることができるのです。 

 この控除制度を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。 

  • 旧住宅を売却した年の11日時点で所有期間が10年を超え、さらに居住期間が10年以上であること
  • 旧住宅を20231231日までに売却すること
  • 旧住宅の売却代金が1億円以下であること 
  • 旧住宅を売却した年の前年の11日から売却した年の翌年1231日までの間に新住宅を購入し居住すること 
  • 新住宅の床面積が50㎡以上で土地の面積が500㎡以下であること 
  • 新住宅が一定の耐震基準を満たし尚且つ築年数が25年以内であること 

なお、買い替えの特例は、居住用の家屋を売却する際の3,000万円特別控除と併用できないので注意しましょう。 

特例制度を利用する場合の注意点

特例制度を紹介しましたが、利用する際は以下の2点に注意する必要があります。 

  • 特例制度の適用に期限がある 
  • 特例制度を併用できない場合がある 

ここからは、それぞれの注意点について詳しく解説します。 

特例制度の適用に期限がある 

1つ目の注意点は、相続した不動産を売却する際の特例制度には期限があることです。 

例えば、取得費加算の特例の場合は、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに不動産を売却する必要があります。 

また、相続した空き家を売却する場合も、相続が開始した日から3年を経過する年の1231日までに不動産を売却する必要があります。 

いずれの場合も売却期限は3年が目安であり、期限を過ぎてしまうと特例を受けられなくなります。 

必ず期限を意識しながら手続きを進めることが重要です。 

特例制度を併用できない場合がある 

2つ目の注意点は、特例制度を併用できる場合とできない場合があることです。 

相続した空き家を売却した場合の控除制度と取得費加算の特例を併用することはできません。 

また、居住用の家屋を売却した際の最大3,000万円特別控除と、買い替える際の特例制度の併用も不可です。 

 どの特例であれば併用できるかを確認し、併用できない場合はどちらを利用するのが良いか、よく検討するのがとても重要となります。 

相続した不動産を売却する税制上のメリット

相続した不動産を売却すると、様々な特例や控除制度が適用され、節税できる点が大きなメリットです。先述したとおり、大体3年以内を目安に売却を実行することで税金を抑えることができるでしょう。 

 さらに固定資産税の面でもメリットがあります。 

不動産を相続した人には、固定資産税の納税義務が生じるため、相続人にとって負担になる可能性があります。売却し手放すことで、固定資産税の納税義務から解放される点もメリットの1つでしょう。 

また、相続した戸建てを放置していた場合、自治体から放置していていると周囲へ保安上・衛生上の問題あるとして「特定空き家」に指定される可能性があります。 

そうなると自治体から改善を求められ、それに従わなかった場合、固定資産税の軽減税率の対象から除外され、税金が高くなるリスクがあるのです。 

相続した不動産は早めに売却することでこのようなリスクを軽減することができます。  

相続した不動産を売却する税制上のデメリット

相続した不動産を売却することのデメリットとしては、譲渡所得税等の費用がかかることが挙げられます。その他にも、売却するとなると、登録免許税、印紙税や不動産会社へ支払う仲介手数料等の諸費用がかかってしまいます。 

 また、相続した不動産を売却して現金化し、その現金を相続税に充てる方法をとる場合、相続の申告納税期限は相続開始から10カ月以内と決まっているため、早期に売却する必要があります。 

そうなると、場合によっては売買価格が希望や相場よりも安くなってしまうということが起こり得ます。 

このようなリスクがある点もデメリットの1つと言えるでしょう。 

相続した不動産売却の流れ

相続した不動産を売却する場合、主に以下の流れで手続きします。 

  • 相続人と相続財産を確定する 
  • 遺産分割協議を行う 
  • 相続登記を行う 
  • 相続税の申告と納付を行う 
  • 不動産会社に相続財産の査定や売却を依頼する 
  • 買主と売買契約を締結し、引き渡す 
  • 確定申告する 

ここからは、それぞれの手続きについてかいせつします。 

相続人と相続財産を確定する 

不動産の相続が開始したら、亡くなった人の出生からの戸籍謄本をすべて取り寄せたり、遺言書の有無等を確認したりして相続人と相続財産を確定します。 

遺産分割協議を行う

相続人間で遺産分割協議を行い、相続不動産を誰が、どの割合で引き受けるのか話し合います。 

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相続登記を行う

誰が不動産を相続するか決まったら、法務局で相続登記を行います。 

相続人と被相続人の戸籍謄本や相続人の住民票や遺産分割協議書等、たくさんの書類を集める必要があるため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。 

相続税の申告と納付を行う

相続開始日から10ヵ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。納付期限を超えると延滞税がかかるので注意が必要です。 

不動産会社に相続財産の査定や売却を依頼する

不動産会社に相続不動産の査定を依頼し、査定金額に納得できたら売却を依頼します。相続税の申告・納付期限内に売却したい場合は、必ず事前にその旨を伝えておきましょう。 

買主と売買契約を締結し、引き渡す

不動産の買主が見つかったら売買契約を締結し、決済・引き渡しを実行します。 

確定申告する

不動産の売却で利益を得た場合、相続人は売却を行った翌年に譲渡所得として確定申告を行います。譲渡所得は、売却で得た収入から取得費と譲渡費用を差し引くことで求められ、これがプラスになった場合は確定申告が必要となります。 

相続した不動産を売却するときの注意点

相続した不動産を売却する場合、以下の2点に注意する必要があります。 

  • 相続登記を必ず行う 
  • 共有名義の場合は共有者の同意が必要 

ここからは、それぞれの注意点について詳しく解説します。 

相続登記を必ず行う

相続した不動産を売却する場合は、必ず相続登記を行う必要があります。 

相続登記を行わずに直接買主に所有権移転登記をすることができません。 

不動産の売却予定がずっと先であっても、なるべく早めに相続登記を行っておくことをお勧めします。例えば、相続した不動産が共有状態である場合、さらに相続が発生したりすると権利関係が複雑になり、いざ売却となった際にスムーズに手続きが進まない可能性があるためです。 

 また、202441日より相続登記の義務化が決定しており、正当な理由なく相続開始から3年以内に相続登記を行わない場合は、10万円以下の科料が課せられることになります。 

共有名義の場合は共有者の同意が必要

相続した不動産が複数の共有名義であった場合、売却するには他の共有者全員の同意が必要です。また、売却すること自体だけでなく売却価格に関しても共有者全員の同意を得る必要があります。 

売却の手続きをスムーズに進めるためにも、あらかじめ共有者全員で売却や価格について話し合っておくのが良いでしょう。 

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相続した不動産売却のシミュレーション 

ここまで相続した不動産を売却した際にかかる税金や特例、注意点等を紹介しましたが、「実際にどれぐらい税金がかかるのかイメージしにくい」という方もいるかと思います。 

ここからは具体的な条件や数値を用いて、どれぐらい税金がかかるのか、特例を利用することでどれぐらい節税できるのかをシミュレーションしていきます。  

【状況】
相続財産:5,000万円、現金1,000万円
不動産の売却金額:7,000万円
不動産の取得価格:3,000万円
譲渡費用:200万円
相続税額:1,200万円
被相続人の不動産取得から相続開始までの期間:10年間
不動産の相続から売却までの期間:2年間 

 まず、課税される譲渡所得額は、売却収入-(取得価格+譲渡費用)で算出できるので、 

7,000万円-(3,000万円+200万円)で、3,800万円となります。 

そして譲渡所得税は、被相続人の不動産取得から売却まで12年(5年を超える)なので、長期譲渡所得の税率が用いられ、3,800万円×20%760万円となります。 

相続した不動産を3年以内に売却する際の取得費加算の特例を利用する場合 

取得費に加算できる額は、相続税×不動産の相続税評価額÷(相続した全体の課税額+債務控除)で算出できるので、1,200万円×5,000万円÷6,000万円で、1,000万円となります。 

この1,000万円が取得価格に加算されるので、譲渡所得額は、7,000万円-(3,000万円+1,000万円+200万円)で、2,800万円です。 

そうすると、譲渡所得税は、2,800万円×20%560万円なので、特例を利用しない場合よりも200万円も節税できることになります。 

自宅を売却する場合の3,000万円特別控除を利用する場合

仮に譲渡所得額から最大3,000万円が控除されたとすると、譲渡所得額は、7,000万円-(3,000万円+200万円)-3,000万円で800万円となります。そうすると譲渡所得税は800万円×20%160万円です。 

つまり特例を利用しない場合より、600万円も節税できることになります。 

不動産の所有期間が10年を超えるときの軽減税率の特例を利用する場合

このケースで軽減税率の特例が適用される場合、譲渡所得額が3,800万円(6,000万円以下)なので、14%の税率が適用されることになります。 

そのため、7,000万円-(3,000万円+200万円)×14%で、譲渡所得税が532万円となり、特例を利用しない場合に比べて、228万円節税できることになるのです。 

まとめ

相続した不動産を売却すると、譲渡所得税等の税金がかかりますが、特例や控除制度があるため大幅に節税できる可能性があります。 

ただ、特例を利用できる期限が決まっていることや、特例を併用できないケースがある点には注意が必要です。 

 相続不動産の売却時にかかる税金や特例制度等について解説しましたが、税制上の詳細なルールや計算はややこしく、個人が正しく理解することは難しいと思われます。 

なので、まずは弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。 

相談者にとって最適な方法を提案してくれるため、税金を抑えた不動産売却を実行できるでしょう。 

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