不動産の相続トラブル例10選!事前に防ぐためのポイントや発生後の対処法は?
不動産は高額な財産であり、分割が難しいため、遺産に含まれると相続人間でトラブルになることがあります。
「親が亡くなったら不動産を相続する可能性があるけど、親族と揉めたくない」「トラブルを防ぐにはどうすればよいの?」と考える方もいるのではないでしょうか。
この記事では、不動産の相続トラブルについて解説します。
よくあるトラブル例や、トラブルを未然に防ぐためのポイント、仮に発生してしまったときの対処法などを詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。
不動産の相続トラブル例10選
不動産を相続したときに起こりやすいトラブルとして、以下の10個が挙げられます。
- 不動産を相続したい人が複数いる
- 誰も不動産を相続したがらない
- 空き家のまま放置される
- 居住者のほかに相続人がいる
- とりあえず共有名義にする
- 不動産の活用方法で意見が合わない
- 不動産の名義が変更されていなかった
- 代償分割による代償金が支払われない
- 相続税が支払えない
- 不動産の売却により譲渡所得税が発生する
ここからは、それぞれのトラブルを事例を挙げながら詳しく紹介します。
不動産を相続したい人が複数いる
相続人が複数人いたり、遺産が不動産のみであったり、不動産が高額で価値があったりすると、「誰が不動産を相続するのか」と相続人間で揉めやすくなります。
- 具体的な事例
父親が亡くなり、長男・次男・三男の3人が遺産を相続することになりました。
父親が所有していた不動産の価値を調べたところ、評価額が非常に高く、資産価値が高いことが判明しました。
3人ともその不動産の取得を希望し全員が譲らないため、遺産分割協議が整わず、最終的に兄弟間の争いに発展しました。
不動産は、現金のように物理的に分けることができないため、全員が納得する形で解決するのが難しく、この事例のようになかなか意見がまとまらないことがあります。
誰も不動産を相続したがらない
立地や環境が悪く、活用の難しい不動産の場合、相続人の誰も相続したがらないことがあります。
資産価値が低いにもかかわらず維持費や固定資産税がかかり、要らぬ負担がかかってしまうためです。
- 具体的な事例
父親が亡くなった後、田舎の方に父親名義の土地があることが判明しました。
相続権は母親と長男・次男の3人にありますが、全員都内に住んでいるため田舎の土地は不要でした。
また、土地の地形が非常に悪いため活用が難しく、誰も所得したがらず遺産分割協議がなかなか進みませんでした。
相続不動産の価値が低い場合は、要らない不動産を相続人間で押し付け合うことになり、相続手続きが難航する可能性があります。
空き家のまま放置される
亡くなった人の不動産が誰にも使用されず、空き家のまま放置された場合、空き家トラブルが発生することがあります。
空き家のまま放置されると、家の劣化が急速に進んだり、劣化によって近隣に迷惑をかけ、近隣トラブルになったり、敷地にゴミが不法投棄されたりといった事態を招くリスクがあるのです。
- 具体的な事例
母親が高齢者施設に入り、住んでいた家をそのまま空き家の状態で放置していました。
数年後に母親が亡くなり、ほとんど足を運んでいなかった空き家を見に行ったところ、部屋がカビだらけで、さらにネズミに電気配線や柱がかじられた状態で、とても人が住めるような状態ではありませんでした。
結局、業者に依頼して改修工事を行うことになり、300万円の費用がかかり「誰が負担するか」で親族間で揉めてしまいました。
空き家は定期的なメンテナンスをしていないと劣化が進み状態が悪くなるため、いざ活用するときに多額の費用や手間がかかるがかかる可能性があります。
また、建物の劣化が進むと行政から「特定空き家」に指定され、高額な固定資産税の支払いを求められるリスクもあるので注意が必要です。
居住者のほかに相続人がいる
相続財産である住宅に居住者のほかに相続人がいる場合、トラブルとなる可能性があります。
- 具体的な事例
長男は母親と長年同居しており、次男は結婚して別の賃貸物件で奥さんと子供と暮らしていました。
母親が亡くなり、長男はこのまま家に住み続けるつもりでしたが、次男が「この家は半分自分も相続している」と主張し、長男が1人で家に住み続けることに反対しました。
次男は家を売却して売却金を折半することを提案しましたが、長男は強く反発し、なかなか決着がつきませんでした。
相続人としては、自分にも所有権がある家に住み続けられることに納得できず、争いになることがあります。
元々住んでいた人は、最悪家を追い出される可能性もあるでしょう。
とりあえず共有名義にする
とりあえず、相続した不動産を相続人全員の共有名義にした場合、後々トラブルが発生することがあります。
- 具体的な事例
賃貸物件を所有していた母親が亡くなり、相続人は長男・次男・三男の3人となりました。
遺産分割協議を行いましたが、なかなか話がまとまらずとりあえず賃貸物件を3人の共有名義にすることになりました。
しかし、数年後長男と次男が立て続けに亡くなり、持分が配偶者とその子供に引き継がれ、4人が新たに相続人に加わることになりました。
三男は不動産を売却したいと考えていましたが、新たな相続人である長男の妻が反対し、結局売却することができませんでした。
共有不動産の売却には共有者全員の同意が必要です。
このケースのように、とりあえず共有名義にすると、相続人が亡くなった場合に共有者が増えて、不動産の売却や活用がさらに難しくなる可能性があります。
不動産の活用方法で意見が合わない
相続人が複数人いる場合、相続した不動産をどのように活用するかで意見が合わずトラブルになることがあります。
- 具体的な事例
父親が亡くなり長男・次男・三男の3人が土地を共有名義で相続しました。
長男は、土地をただ持っているのでは維持費がかかるだけなので、土地を利用して駐車場経営を始めようと提案しました。
しかし、次男と三男は整備費用や管理費用がかかることや収益を上げられないリスクがあることを理由に反対しました。
結局、3人の意見がまとまらず、いつまで経っても土地の有効活用ができず、兄弟間も不仲になってしまいました。
相続不動産を共有名義にすると、自分だけの意思で活用法を決めることができず、共有者間で揉めてしまう可能性があります。
不動産の名義が変更されていなかった
相続が発生したとき、不動産の名義が前所有者のままだったことが発覚するケースがあり、この場合もトラブルになることがあります。
- 具体的な事例
土地を所有していた父親が亡くなり、配偶者である母親と子供が土地を相続しました。
しかし、いざ登記事項証明書を取り寄せてみると、不動産の名義が祖父のままで父親が相続した際に父親の名義に変更されていませんでした。
この場合、祖父から母親の名義に変えることができず、まずは祖父から父親への名義変更が必要であることが判明しました。
祖父から父親への名義変更を行うには、祖父の相続人である叔父の同意が必要ですが、叔父もすでに亡くなっており、さらに叔父の相続人である従妹の連絡先がわからず、なかなか名義変更手続きを行うことができませんでした。
この事例のように、被相続人が生前に名義変更を行わず放置していると、相続手続きが難航する可能性があります。
また、1つ前の相続人が名義変更に同意してくれない可能性もあり、トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
代償分割による代償金が支払われない
代償分割とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が不動産を現物のまま相続し、他の相続人に対して金銭(代償金)を支払う遺産分割方法です。
代償分割の方法を選択した場合、この代償金の支払いでトラブルになることがあるのです。
- 具体的な事例
父親が亡くなり、子供である長女と次女が相続人になりました。
話し合いの末、父親が所有していた不動産(評価額2,000万円)を代償分割で相続することになり、長女が不動産をすべて相続して、次女に対して1,000万円を支払うことになりました。
しかし、代償金の支払期日や支払い方法を決めておらず、いつまで経っても長女から代償金が支払われませんでした。その後、相続した不動産が第三者に売却されていたことが判明し、そのまま長女と連絡がとれなくなってしまいました。
遺産分割協議の時点で、支払い期日や支払い方法、遅延した場合のことなどを詳細に定めておかないと、この事例のように代償金を踏み倒されてしまう可能性があります。
相続税が支払えない
不動産を相続する場合、相続税を支払えないというケースがあります。
- 具体的な事例
父親が亡くなり、住んでいた家と別途所有していた収益物件を長男が1人で相続しました。
しかし、後に相続税が約1,000万円もかかることが判明しました。
現金の遺産はほとんどなく、貯金も少なかったため、周りにお金を借りれないか頼むも断られてしまいました。
結局、相続税申告期限までに現金を用意することができず、税金を滞納してしまいました。
不動産の金額などによっては相続税が高額になることがあります。
また、基本的に相続税は現金で支払う必要があり、この事例ように遺産のほとんどが不動産の場合は、相続税に充てる現金が足りないということが起こるのです。
不動産の売却により譲渡所得税が発生する
不動産を売却した場合、取得した利益に応じて不動産所得税がかかります。
この不動産所得税の負担について、相続人間でトラブルになることがあります。
- 具体的な事例
父親が亡くなって相続人である長男・次男・三男で遺産分割協議を行い、父親が住んでいた家を売却することになりました。
長男の名義に変更したうえで売却手続きを進め、6,200万円の売却金が手元に入りました。
長男が売却手続きを行ったので、長男が2,200万円、次男と三男が2,000万円ずつ取得することになりました。
その後、長男が譲渡所得税を3人で均等に分割して支払うことを提案したところ、次男と三男は、「200万円も売却金多く貰ったのだから長男が負担すべき」と支払いを拒否しました。
遺産分割協議時点で譲渡所得税のことも取り決めておかないと、この事例のように、いざ税金が発生したときに相続人間で揉める可能性があります。
不動産の相続トラブルが起きてしまう理由
不動産を相続するときにトラブルが起こりやすい理由として、以下の2つが挙げられます。
- 公平に分割することが難しいため
- 高額な財産であるため
ここからは、それぞれの理由について詳しく解説します。
公平に分割することが難しいため
不動産は、現金のように公平に分けることが難しいため、トラブルが起こりやすくなります。
先述したとおり、共有名義にした場合は、不動産を処分するのに共有者全員の同意が必要であり、相続人間で意見が割れて揉める可能性があります。
代償分割を行った場合も、不動産を取得した相続人の負担が大きく、最悪他の相続人への支払いができないことがあるでしょう。
また、現金分割の方法もありますが、他に同等の価値の遺産がないと相続人間で偏りが生じることがあります。
不動産の場合、どの分割方法が最適かを判断するのが難しく、どうしても争いが生じやすくなるのです。
高額な財産であるため
そもそも不動産自体が高額な財産であることも、トラブルに発展しやすい理由の1つです。
ほとんどの不動産は、数百万円~数千万円の価値があり、高いと数億円になることもあります。
高額であるが故に、取得を希望して揉めてしまったり、税金が高額になり誰が負担するかで
トラブルになったりすることがありまるのです。
不動産の相続トラブルを起こさないためのポイント
先述したような相続トラブルを防ぐには、未然に対策を行っておくことが重要です。
不動産を相続する際のポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 生前親族間でよく話し合っておく
- 遺言書を作成する
- 登記名義人を確認しておく
ここからは、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
生前親族間でよく話し合っておく
被相続人が生きている間に親族間で話し合っておくことで、相続時のトラブルを未然に防げる可能性があります。
「不動産を誰が相続するのか」、「共有名義にするのであれば持分割合はどうするか」、「分割方法はどうするか」、「不動産をどのように活用するのか」など、事前にしっかり決めておくことで、いざ相続が始まったときにスムーズに協議を進めることができるでしょう。
また、事前によく話し合っておくことで被相続人の意思を理解でき、必要に応じて生前贈与などを検討することも可能となります。
遺言書を作成する
親族間で意見が食い違う場合、遺言書を作成しておくことでトラブルを防げる可能性があります。
被相続人が不動産を取得する人や活用方法をなど指定しておくことで、相続発生時に協議する必要もなくなるため、争いごとになりにくくなるでしょう。
ただし、遺言書に不備があったり、法令に準拠して作成されていなかったりすると、遺言書自体が無効となってしまうことがあります。
また、遺留分にも注意が必要であり、すべての財産を1人に相続させるような内容の場合、法定相続人から遺留分を侵害していると主張され、トラブルになる可能性があります。
遺言書を残したい場合は、弁護士などの専門家に依頼し、適正に作成してもらうのがお勧めです。
登記名義人を確認しておく
被相続人が生きている間に、登記名義人を確認しておくことも重要です。
登記名義人が被相続人以外の場合は、速やかに変更登記の手続きを行いましょう。
被相続人が亡くなった後に名義変更を行う場合、1つ前の相続人にも同意を得る必要があり、手続きが難航する可能性があります。
事前に登記を確認し、問題があったらその時点で対処しておくことで後のトラブルを防ぐことができるでしょう。
不動産の相続トラブルが起きた時の対処法
いざ不動産の相続が始まり、親族間でトラブルが生じてしまった場合の対処法として、以下の2つがあります。
- 弁護士などの専門家に相談する
- 裁判所の手続きを利用する
ここからは、それぞれの対処法を詳しく解説します。
弁護士などの専門家に相談する
相続問題には多くの法律知識が必要であり、相続トラブルを自力で解決しようとすると、余計に問題がこじれてしまう可能性があります。
そのため、実際に相続トラブルが起こってしまった場合は、相続問題に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に間に入ってもらうことで冷静な話し合いができたり、最適な妥協点を見つけることができたり、相談者にとって様々なメリットがあるでしょう。
裁判所の手続きを利用する
相続トラブルが起こった場合、調停や審判などの裁判所での手続きを利用する方法があります。
裁判所の手続きを利用することで、法律に精通した調停官のもと協議を進められるので、法律的に妥当な解決案を目指すことができます。
また、調停調書や審判調書は債務名義として効力を有するため、仮に調停や審判で決まったことが履行されなかった場合、強制執行を行うことができます。
自分たちだけで解決することが難しいときは、裁判手続きを検討するとよいでしょう。
不動産の相続トラブルまとめ
不動産は高額な財産であり、均等な分割が難しいことから、相続時にトラブルになることがあります。
紹介したようなトラブルを防ぐためにも、事前に親族間でよく話し合い、対策を練っておくことが非常に重要です。
問題がこじれ、揉め事に発展した場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
早期解決を目指して適切なアドバイスを受けられ、仮に裁判手続きに進んだ場合もサポートをしてもらえます。