一般社団法人による相続税対策とは?注意点もあわせてわかりやすく解説

一般社団法人による相続税対策にお悩みではありませんか 

一般社団法人による相続税対策2018年の法改正で節税効果は減少しましたが、まだ非常に大きなメリットがあるため、一般社団法人を活用する際はこの法改正を踏まえることが重要です。なお、法改正の内容は下記で詳しくご紹介します。 

一般社団法人は、2006年に設立が認められました。設立許可が必要な公益社団法人とは違い、定められた手続きと登記で誰でも設立可能で、相続税や贈与税などで節税効果があります。 

しかし、租税回避(租税法が規定していない法形式で税負担の減少を図る行為)の批判を受けて、2018年に法律が改正されました。 

本記事では、一般社団法人による相続税対策とは何か、2018年の法改正による節税効果や注意点についてわかりやすく解説します。また、相続税対策で一般社団法人を活用する方法が向いているケースもご紹介します。  

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一般社団法人とは 

一般社団法人とは、財産上・金銭上の利益を目的としない「非営利法人」です。非営利とは、利益を得ていないという意味ではなく、利益を得てもメンバーに分配せず、組織の活動に費用を使うことを指します。 

平成18年法律第48号「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」では、一般社団法人の設立や組織、運営や管理についての規定があります。 

非営利法人は、利益がある事業を行うことも、メンバーに報酬や給与を分配することもできますが、事業によって得た利益を株主に分配する「配当」はできません。 

営利法人である株式会社は、株主に利益を配当して還元します。しかし非営利法人は、利益は翌年度以降の活動資金として充てることになります。 

非営利法人としては、NPO法人や公益法人などがよく知られています。活動内容についての制約など設立の要件は厳しく、設立までに実績期間がかかるのが非営利法人の特徴です。 

これに対し、一般社団法人は活動内容が自由で、設立までの期間も長くかかりません。比較的設立が容易で、任意団体の法人化においても一般社団法人を選択する組織が多くなってきています。 

一般社団法人で相続税を節税する仕組み 

一般社団法人は、株式会社のような利益配当はできませんが、収益事業を営むことは可能で、不動産や有価証券などの収益財産を所有することもできます。 

また、資本金に相当する出資が不要で、設立時に2名以上のメンバーがいれば設立できます。出資が不要なので、一般社団法人には株式会社のような持分がない状態で、法人がもつ財産の所有割合に定めがありません。 

このような法人は、「持分の定めのない法人」と呼ばれています。一般社団法人の財産は持分の定めがないので、相続財産の対象にならず、相続税が課税されません。 

法人の設立時には、メンバー全員の同意のもとで定める企業原則が記載された書類「定款(ていかん)」を作成します。 

一般社団法人で相続税対策するメリット 

一般社団法人による相続税対策には多くのメリットがあります。節税効果や遺産分割の手間の軽減、事業継承の税負担を回避するなどが主な利点です。 

節税効果が大きい 

一般社団法人による相続税対策では、節税効果が大きいです。 

法人名義に変更したあとで、子供を理事に選任すれば、相続税は課税されません。理由は、株式会社だと役員の選任手続きに当たり、税制上、相続税や贈与税に該当しないからです。  

さらに、一般社団法人では、不動産同族会社運用可能で、理事への報酬額も制限がないので、不動産同族会社などの資産を所有していることと同義になります。 

しかし、一般社団法人を悪用した租税回避が発生したことで、2018年に法改正が行われ、現在この仕組みはあまり機能していません。 

法改正の内容については、下記でご紹介します。 

不動産の相続で遺産分割する必要がない 

一般社団法人による相続税対策のメリットには、相続で遺産分割の必要がないことも挙げられます。 

一般社団法人を設立して、不動産の名義を法人名義に変更すると、一般的な相続で発生する、不動産の分割による問題を解決できることがあります。 

不動産の相続人が複数人いる場合、資産は均等に分割することが困難です。他方、売却すれば金銭として均等に分割できます。 

しかし、不動産として所有したい場合に共有名義などで相続すると、取り決めがあるたびに相続人全員の承認が必要になり、売却や賃貸などが困難になります。 

土地は、分割した土地として登録し直す「分筆」で相続する方法もありますが、一定の面積や面する道路などがなければ、資産価値が落ちてしまいます。 

そのため、不動産からの収益を報酬として均等に配分すれば、不動産自体を分割や売却せずに済むので、不動産の資産価値を保つことができます。 

事業継承で相続税が発生しない 

事業継承で相続税が発生しないことも、一般社団法人で相続税対策するメリットとして挙げられます。 

一般社団法人が、事業承継する同族会社の株式を所有し、一般社団法人の代表理事を後継者に引き継ぎます。事業承継時の相続税は、現在の経営者から後継者に同族会社の株式を移転することに対して課税されるものです。そこで、同族会社の株式を後継者に移転するのではなく、一般社団法人に移転します。 

すると、一般社団法人が同族会社の株式を所有することになるので、同族会社の株式の相続税は課税されません。一般社団法人の代表理事を後継者が務めることで、事業を管理できます。 

なお、一般社団法人による事業承継には、「直接保有型」と「間接保有型」があります。 

直接保有型は、一般社団法人が事業承継する同族会社の株式を100%所有し、持株法人となります。同族会社の株式を100%所有しているため、一般社団法人の代表理事は対象の会社を管理できます。 

間接保有型も、一般社団法人が事業承継する同族会社の持株会社の株式を100%所有します。しかし、直接保有型とは違い、一般社団法人と対象の会社の間に、持株会社が存在することになります。 

このように、一般社団法人には株式がなく、その支配権は代表理事に帰属します。一般社団法人から後継者への事業承継も、株式の移転ではなく代表理事の交代によって行われるので、相続税が課税されません。 

一般社団法人による具体的な相続税対策 

一般社団法人による具体的な相続税対策について解説していきます。 

たとえば、Aさんが子供と一緒に一般社団法人を設立したとします。Aさんは設立した一般社団法人に対して、自分の財産を譲渡しました。すると、Aさんの財産は一般社団法人に移転したことになります。 

そのあと、Aさんが亡くなったとします。相続税は、亡くなったAさんの財産に対して課税されますが、設立した一般社団法人に譲渡した財産には課税されません。これが株式会社の場合、会社から発行された株式がAさんの財産として、相続税の対象となり課税されます。 

一般社団法人が解散されないかぎり、譲渡した財産は半永久的に相続税が課税されない財産となります。 

贈与した場合 

一般社団法人による相続税対策において、財産を贈与すると受増益やみなし譲渡益が課税されます。理由は、贈与しても時価で売ったものとして扱われるからです。 

譲渡は有償による移転、贈与は無償による移転として判断されるので、無償で財産をもらったことが会社の利益になってしまい、一般社団法人には法人税が課税されます。 

また、この一連の行為が「相続税や贈与税を不当に減少させる結果になる」と税務署が判断した場合、設立した一般社団法人を個人として扱い、相続税や贈与税が課税されます。 

しかし、どのような場合に相続税や贈与税を課税するのか規定が不十分だったため、そのあと国は2018年に税制改正を行いました。この税制改正の内容については下記で解説します。 

一般社団法人による相続税対策において、贈与は譲渡よりもリスクが高いということになります。 

解散した場合の財産 

一般社団法人が解散した場合、その財産は誰のものになるのでしょうか。 

一般社団法人は、定款(企業原則を定める書類)によって、解散した場合の財産を誰に渡すか、あらかじめ決めておく必要があります。しかし、解散したときの財産を設立者などに渡してしまうと、株式会社と変わらないので設立できません。 

一般社団法人の定款は、設立するときに公証人の許可が必要です。ただし、設立したあとに変更したときは公証人の許可は必要ありません。 

そのため、一般社団法人を設立するときの定款では「当会社は、解散時の財産は国又は地方公共団体等に譲渡する。」という内容を記載します。設立後、「当会社は、解散時の財産はその事業年度に関する社員総会等において権利を行使することができる。」という内容に変更すれば、一般社団法人の財産を設立者やその親族の財産にできます。 

この方法だと、相続税は課税されず、親から子へ財産を渡すことが可能です。 

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一般社団法人で相続税対策する注意点 

2006年に一般社団法人の制度が創設され、その仕組みをうまく活用すれば相続税対策できるようになりましたが、悪用する税金逃れが発生しました。 

そのため、2018年の税制改正によって、相続税の節税効果は大きく低下しました。 

ここでは、一般社団法人で相続税対策する注意点について詳しく解説します。 

税金逃れに対する規制 

2018年の法改正前も、一般社団法人を利用した相続税の税金逃れは、相続税法で規制されていました。相続税法の内容は、一般社団法人などの持分の定めのない法人で、財産の贈与または遺贈があり、親族などの税負担が不当に減少する場合は、法人に課税できるという規定です。 

しかし、不当に減少するという内容について、一定の要件が定められていましたが、規定の内容が曖昧で実効性がありませんでした。 

そこで、2018年に法改正が行われました。 

2018年の税制改正 

2018年の税制改正では、持分の定めのない法人による相続で、税負担が不当に減少するという内容の曖昧な部分が、明確に規定されました。 

相続税の課税対象になる一般社団法人 

2018年の税制改正では、財産を一般社団法人に移転すれば、相続税が課税されない点も対象になりました。つまり、一般社団法人に財産を移転しても、相続税が課税されるように改正されました。 

このように、相続税の課税対象となる法人と、対象外の法人についてのルールが定められました。相続時点で法人の理事のうち、同族理事が2分の1を超える一般社団法人には、相続税が課税されます。 

また、相続開始前における5年以内の役員割合についても定められ、同族理事が3年以上にわたり過半数であった場合も、相続税が課税されます。 

同族理事とは、被相続人および被相続人から見て、以下のような親族などが理事になっている場合が当てはまります。 

  • 配偶者(事実婚を含む) 
  • 三親等内の親族 
  • 被相続人と特殊な関係がある者(被相続人が役員となっている会社の従業員、被相続人によって生計を維持している者など) 

課税対象になる金額は、相続開始時の純資産額を、同族理事の数に1を加えた数で割った額になり、遺贈により取得したものとみなされます。 

遺贈により取得したとみなされる課税対象額 = 純資産額 ÷ ( 同族理事の人数 + 1 ) 

一般社団法人における相続税対策のまとめ 

一般社団法人による相続税対策は、不動産の承継や、同族会社の事業承継のとき、収益の分散による節税効果を得たいときにおいて効果的です。 

しかし、一般社団法人を活用した相続税対策では、2018年における税制改正が行われましたので、これに特に注意して進める必要があります。

正確な情報を得たいときや判断に迷うときは、弁護士に相談することがおすすめです。 

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